エピソード14:エリ アンド リラ
文字数 1,940文字
つづいてリラが向かったのは倉庫だった。その名前を見たときエリの言っていたことを思い出し、ここにもなにか奇々怪々な品物があるのかなと期待していたのだが、入ってみるとただ乱雑に本がしまってあったり積んであったりしているだけだった。またもや期待外れの結果に落胆し心底つまらなさそうな顔でその本たちを調べ始めた。適当な本を一冊手に取りタイトルを見たら隣の山に乗せていく――この一連の流れをいかにも退屈そうにぐだぐだとやっていき、ある本を手に取ったとき、ふいにその手が止まりタイトルに視線が注がれた。『壁にも障子にも彼あり』。ことわざをもじったものだということがすぐにわかり、その意味を思い出して彼女はなにか閃くその予兆めいたものを感じた。その感覚を頼りに本の中身に目を通すと、予感した通りにあることを閃いた。それでしばらくのあいだ考えを巡らせたあと、彼女はトランシーバーを取った。
ちょっと待つと応答があった。
リラがそう告げるとしばらくトランシーバーは沈黙した。電波の向こう側でいまエリはなんだろうと考えているんだなと、そしてどんな答えを出すのかなとリラが楽しみにしていると、ついに彼女から返答があった。
その答えを聞いてリラはつい笑ってしまった。
そうそう! 今みたいな無線でのやりとりっていったらやっぱりコードネームなんだよ。んで、いちおうもう考えておいたから。エリが『ゴースト』であたしが『ガール』ね! どう? 二人合わせて『Ghost and Girl』
リラの提案からやや間をおいてエリは言った。
最初の反応がイマイチだったのでダメかなと思っていたのだが予想に反してあっさりと受け入れてくれ、リラは喜びつつ心の準備を済ませ、ゲームに出てきた上官のように低い声でゴーストに呼びかけた。
通信が終了しあたりに静寂が訪れ、その中でリラはニヤついていた。恥ずかしさと満足感でどうしても口角が上がってしまう。エリに感想を聞きたいのだが、今のままでは上手く話せないかもしれないので何度か深呼吸をして落ち着かせ、それからトランシーバーのボタンを押した。
するとやや間を置いて
まったくもって予想外の告白にリラはドキッとして返事に詰まってしまった。唇も目も体のすべてが、そして心もあたたかく緩んでいくのを感じるが、返事をしないままではエリを不安にさせてしまうため、急いで自分の気持ちも伝えた。
そこでまた二人して黙ってしまった。やがてリラが口を開く。
通信が終わった。リラはまたしてもトランシーバーの前でニヤついている。まさかエリからあんなことを言われるとは思ってもおらず、ここまで体験してきた色んなことを思い出し、あらためてエリと出会えたことそして友達になれたことを嬉しく思った。ただそのおかげで、まだまだ顔は戻りそうにない。
とリラは思う。
体の奥からやる気があふれ出してきて、退屈でしょうがなかった調査もなんのその、腕捲りをして気合を入れると物凄い勢いで片付けていった。――――