エピソード10:終わりはやってくる
文字数 2,169文字
案内役のオバケが三人の前に出て、
耳をふさぎながらリラは怒った。
エリも耳をおさえながら言った。
オバケがそう言うと両端のスクリーンが高速でランダムな数字を映しはじめ、
そして止まった。
その瞬間、後ろの観客席から大きな歓声と拍手が巻き起こった。
それでリラとエリにもおしみない拍手が送られるが、ふたりは―特にリラはぶすっとして―不満気。それを見たオバケが尋ねた。
リラは食い気味に返した。
リラの文句にエリも同調してうんうんとうなずく。
とリラが非難すると
とエリが笑い出した。
まさか笑うとは思っていなかったためリラはすこしどぎまぎしながら尋ねた。
聞き返すリラにエリはくすくすと笑いながらうなずく。もともとちょっと言ってやろう程度で始めた文句でたいして怒っていなかったのが、エリの笑顔でさらに毒気抜かれて、ついにはリラも笑い出した。
とオバケが頭を下げると
エリもお辞儀をした。
これにて一件落着し、話は次に移った。次に――そう、最終ステージの三競技目、お別れの前へとやってきた。
ただの看板に書かれただけの文字が、他の時といっさい変わりようがないはずなのに、この時ばかりは重々しく感じられ二人は押し黙ってしまった。その胸の締め付けられる沈黙は自然と案内役のオバケにも観客席のオバケたちにも伝わっていった。しかし、やはりその悲しみを打ち破ったのはリラだった。
しかしその声は震えていて強がっているのが誰の目からも明らかだった。
問われたエリは、真っ白な自分の服を大きな皺ができるほどギュッと握りしめうつむいていた。リラの心が泣き出したくなるほど痛んだ。エリの思いが痛いほど伝わってくる。自分もまったく同じ気持ちだったし、なによりエリと自分とではこの終わりの意味がまったく違っているのもわかっているから。それでも彼女はエリの手を取って言った。
その声は涙に震えていた。
エリはすこし顔を上げた。上目づかいにリラを見る。その瞳は痛みと悲しみに揺れていて、そして何かを理解したような色を見せた。リラの両手はどうしようもできない冷たさを今、一番感じた。エリはまた顔を伏せ、ややあってうなずき、そして言った。
エリからの問いかけにリラは驚いて、嬉しくなった。
ふたりの心は固まり、オバケに向き直った。
オバケは彼女たちの陰りも曇りもない表情からその決意をはっきりと感じつつも問いかけた。
リラとエリは間髪いれず答えた。
リラはどうせと言いたげな顔をしなおかつ肩をすくめて言った。
リラとエリはニヤニヤと笑い合いながら言った。
リラは楽しそうに返事をして、エリはうなずいた。それで案内役のオバケが指示を下すと、ふたりのいるカウンターと置いてある銃がたちどころに消え(ミス・ハンターはいつのまにか退場していた)、足場がなくなり一瞬リラがびっくりしているあいだに背後の観客席も観客もろとも片付けられた(そんな気配がした)。そしてどんな“とっておき”を用意しているのか、後ろを覗きたくなる欲求をなんとか抑えながら待っていると、まもなくいつものオバケが現れて言った。
ふたりは目を合わせたあと、せーので一緒にくるっと回った。