エピソード11:つながる
文字数 1,641文字
エリはすこし考えて答えた。
リラは別行動をしようと決めた時に抱いた希望を伝えた。彼女が二階を選んだのは、エリに二階を一から調査してもらうのは悪いと思ったのと――どちらかといえばこちらのほうが割合占めているかもしれない――ただ単純に自分が行きたかったから。それでリラの希望を聞いたエリは迷うそぶりすら見せずに答えた。
そう言いながらエリは持っている地図をひろげた。
そうやってお互いに譲り合うもののどうやら状況的に主導権はエリにあるようで、彼女は持ったままだとおぼえにくいからと地図を机の上におき、廊下や部屋を人差し指でなぞりはじめ、その指先に一心に視線を注いだ。その姿にリラはこれ以上言ってもしかたがないことを悟り、彼女の作業の邪魔にならないように口をつぐんだ。それからしばらくして、黙々と一階を頭のなかに叩き込んでいたエリが
とつぶやき、頭をあげた。
そしてそう言いながら地図を折りたたみ、リラに渡した。
言いかけて言葉を切ったあと、すこし間をあけてからリラは言った。
ふたりはトランシーバーを取り出し、隣り合った。
リラは説明をしながら実演してみせた。エリもまねてやってみた。まずトランシーバーの上のつまみをちょっと力を込めて回すと、つまみのガラスだか透明なプラスチックだかの部分が緑色に光り、画面に幽霊通信と出た。さらにつまみを回すと、パネルに数字と右側へと段々と高くなっていくゲージが表示された。
それでふたりはボタンを押してチャンネルが変わることを確かめたあと、かりとしてチャンネル1に合わせておいた。
そう言ってリラは部屋の反対側に向かった。そして彼女がトランシーバーを口元に持っていくのが見えると、エリのトランシーバーからノイズ混じりの声が聞こえてきた。
そしてプツリと切れた。エリはなんだか妙にドキドキしながらボタンを押して返事をした。
するとすぐにリラから返答がきた。
それじゃ聞こえてないのにひとりで話していたのかとエリは恥ずかしく思いながら、あらためてボタンを押したまま言った。
これでトランシーバーがちゃんと動作することが確認できたので、リラはエリのところへ戻った。