エピソード6:かべ?
文字数 1,491文字
そうして二人は各自めのまえに立ちはだかる壁を調べ始めた。触ってみたり、叩いてみたり、顔をつっこんでみたりと色々試していくなか、リラが端っこであることに気がつき声を張りあげた。
呼ばれたエリがリラのところへ降りてくると、彼女は右側の壁にほっぺたを押しつけててまねきをしながら言った。怪訝に思いながらもエリは言われたとおり同じかっこうをした。するとリラがなにを見せたかったのかわかった。
二人の視界には、正面と右側の壁の間にあるわずかな空間そしてその先にある通路が映っていた。
しかし当然ながら人が通れるわけもないのでエリがそう言うと、リラは口をとんがらせて言った。そこで二人は壁から離れて近くになにかないかと探してみた、がめぼしいものは見つからなかった。そのため今度は範囲を、リラは左側の壁のほうまで、エリは天井のほうまで広げて調査した。その結果、二人ともおなじものを見つけてきた。そう、上にも左にもすきまがあいていた。
二人の調査結果をもとにリラは腕を組み首をかたむけながら言った。
それを受けてリラはうなってすこし考えて、チラッとエリを見たあと遠慮がちに言った。
リラの心配とはうらはらに、何の躊躇もなくむしろ頼ってもらえるのがよほどうれしいみたいで、エリはちょっとだけ調子の高まった声で引き受け箱の中へと入っていった。少ししてエリが箱の中から出てきたので、さっそくリラは彼女にたずねた。
報告の内容にリラは肩を落とした。が、
とエリは続けた。
何かを理解したらしくリラはそう言って壁をペタペタと触ったあと、
と腕捲りをし気合を入れ、それから両手を箱に当てた。そして全力で押し始めた。すると、信じられないことになんとリラの何倍も、いや何十倍もの大きさを誇る巨箱が、ズズッと音をたてて動き出した。その様子をただじっと見守っていたエリは箱が動き出したのを見て
と小さな声をもらした。その声を聞いたリラはいったん押すのをやめてエリを振り返って得意げに言った。
エリは元気よくうなずき、リラの隣に並んで両手を壁にくっつけた。
その掛け声に合わせて二人は両腕にありったけの力を込めた。すると、リラがひとりで押したときよりも音をたててずっと動いた。
動き出した勢いを殺さないようにリラがエリに声をかけ、二人はそのまま歯を食いしばって力の限り押し続け、まもなくあと最後のひと押しというところまできた。そこで二人はひと息入れて
リラの合図とともにすっぽりと箱を納めた。そうして二人は力を合わせて目の前の壁を乗り越えた……のではなく、その四本の腕の力でもって道を押し作った。