エピソード5:つめたいあたたかさ
文字数 842文字
あっという間にお楽しみの時間が終わり、エリはリラをぶらさげたまま部屋の中央に戻って、そう言いながら慎重に彼女をおろしていった。やがて地面に降り立ったリラはくるりと振り返り、エリが降りてくるのを待ってから言った。
気まずそうに言いよどむエリを見てリラは
と思ってウキウキとした気分が一気に吹き飛び、心配からドキドキと大きな音を胸のなかで鳴らしながら尋ねた。
服の胸あたりを両手でしわくちゃにし、きょろきょろと視線を泳がせてエリは言った。その心配事を聞いてリラはほっとした。そしてわだかまる不安を握っているその両手を自分の手で包みこみ、あっちに行ったりこっちに行ったりと不安定な眼をつかまえて答えた。
得意げに鼻を伸ばすリラをエリはいたずらな笑みを浮かべて突っついた。すると
と細長いお菓子のようにかんたんにポキッとその鼻っ柱が折れてしまったものだから、
ふたりはいっせいに笑い出した。