第一幕第一場(1)

文字数 527文字

溶明。
段差のある舞台。

地下道、高架下、公園、室内、そのいずれでもあり、いずれでもない、がらんとした空間。


タカ、浮かび上がる。

服を脱ぎ始めるが、ふと手を止め、客席を見つめる。
脱がなくていいんですか?
間。

もったいないなあ、俺の裸、キレイなのに。料金同じですよ。そんなに急がなくても。二時間あるのに。――(ふたたび脱ぎ始めるが、また手を止めて)下もいいって、どういうこと? 口だけ? まあ、じゃあ、シャワー浴びていただけますか、うちの店そういう決まりなんで。――それもなし? あ、そ。べつにいいけど。で? どうします?(小馬鹿にしたように)お手々つないで添い寝でもしますか?――話? 話が聞きたいって、俺の?(笑い出す。長く尾を引く笑い。不意に笑いやめて)おたく、警察の人?

リキ、浮かび上がる。タカと同じ服装。
(静かに)あの人、何かしたんですか。――家に帰らなくなって、二ヶ月、だったんですか。――奥さんが。そうでしょうね。心配、でしょうね。――もちろん、お役に立てるんでしたら、なんでもします。自分も心配なんで。でも、ほとんど何も知らないんですよ、あの人のこと。――ゲンさんって、呼ばされてました。――そうですか。やっぱり本名じゃなかったんだ。
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登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

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