第二幕第一場(2)

文字数 456文字

俺も、自分で産めるわけじゃないから。誰か産んでくれないかなあなんて。俺の子じゃなくてもいいんです。……よく、電車の中なんかで、子どもに見られるんですよ。
子どもに、見られる?
気がつくと、よその赤ちゃんが、じーっとこっち見てたりするんですよ。目が合うと、にこーっと笑ったりしてね。もう、たまらないですね。
(微笑する)
そういうとき思うんです。たとえばこの子を、絶対、絶対、傷つけないようにして、育てることはできないのかなあって。世界中でたった一人でもいいから、とにかく、めちゃくちゃ幸せにしてあげることはできないのかなあって。
(静かに)それは、自分の町を持つより、面倒くさいんじゃない?

そうですね。

二人、笑う。
少し眠ったら。
(眠そう)眠くないですよ。
疲れたでしょう。
そうでもないです。
痛まない?
大丈夫です。(ためらってから)もう一つだけ、聞いていいですか。
どうぞ。
(眠りかけている)ゲンさんも……、さびしかったんですか……?
間。
ゲン、リキを背後から抱きすくめる。
ずっとね。
リキ、ゲン、消える。
タカ、ハツ、浮かび上がる。
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登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

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