第一幕第八場(3)

文字数 755文字

こんにちは。はじめまして。
(悲鳴にならない声を上げて後ずさる)
あらら、そーんなにビックリしなくてもいいじゃない。急に別人になったと思った? 当たり。リキと俺、まったくの別人なのね。ま、俺ら二人でこの一つのカラダ共有してるんで、誤解されやすいっていうか? そんなとこ。(手をさし出す)ども。俺、タカです。
なっ……
ハツコさんだよね。ハッちゃんって呼んでいい?
何なの。
えっ冷たいー。リキのときと違うー。差別ー。あーん、嫌われちゃった? どうして? 同じ顔、同じカラダなのに。そんなにリキのほうがいいんだ。ね、あんたあいつのことけっこうスキだよね。
何なの?!
さっきさぁ、何か言いたそうだったじゃない、あれってもしかして、愛のコクハク、はぁと(手でハート形をつくる)ってやつだった? ふふん。どうしてやめちゃったの、いい感じの展開になりそうだったのに。感動してたのよ俺。リキのやつもオドオドしやがって、中学生かっつーのまったく。ね、あんたもしかして、まだ現役? その歳で? まだアガッちゃってないの、生理?
な……!
ごめんごめんごめん冗談だって。(ハツの手をつかむ)幾つになっても、恋はいいものよー。お肌にねー。イキイキツヤツヤ、プリプリのもとってね。(力ずくでハツの手を自分の顔へ持っていく)ほら、さわってみなよ。さわりたいんでしょ、俺に。ねえ。ハッちゃん。
いやーっ! 放して! もとに戻って! お願い、もとに戻ってよ!
間。
わかった。戻るよ。じゃ、呼んでよ。
呼ぶ……?
あいつの名前。そしたら、俺ら交代するから。
名前?
そう。
(ためらった後、意を決して)リキ……君?
タカ、ハツの手を放し、リキの背後に引っ込む。
リキ、身ぶるいして覚醒し、頭を二、三度振り、押さえる。
痛っ……
茫然と見守っているハツ。
リキ、ハツを見、はっとする。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色