第一幕第八場(6)

文字数 470文字

見ろ。見てみろ。いいかげん、鏡を。お前はもうグズでノロマのブタ野郎なんかじゃない。見ろ、まわりの奴らを。お前を見てる。女も、男も。
やめろ。
お前を欲しがってる。
やめろ……!
笑えるよな、ツラの皮一枚むけば同じなのに。(リキの服を脱がせていく)ほら。見てよ。
見ないで。
さわってよ。
俺は何をしてる。
金までもらえる。
俺じゃない。俺じゃない。

(営業スマイルで)お疲れ様でーす。今じゃ常連さんをうまく振り分けるだけでもう大変。だから普通は紹介もなしの新規の客が俺に回ってくるなんてあり得ないの。なのに同じ店に一人嫌な野郎がいてね、そいつが俺の客盗ったんだよ、店の電話に勝手に出て、おかしいですね、今日はタカ休みもらってますなんて汚いウソつきやがって、クソして死ねっての。だから正直あの日俺ものすごくクサクサしてた。(ある方向を向いて)ええもう誰でも来いですよ、店長。別に指名じゃなくたっていいですよ。行きますよ。しぼりとってきてやりますよ、一滴残らず。


指定されたホテルに着いて、部屋に入ったら――あの人だった。
ゲン、浮かび上がる。かたわらにスーツケース。
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登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

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