第二幕第二場(1)

文字数 1,012文字

何を考えてたの?
いつ?
今。
別に。
今日はどっち。リキ君? タカ君?
(明るく)賭けますか?
何を賭けるのよ。そういう言い方は、タカ君ね。
当たり。
静かだから心配しちゃった。
あらそう? ありがと。優しいのね。
どうしちゃったの、急にオネエ言葉? 本物のオネエでもないのに。
(ハツをくすぐる)どうせアタシはノンケよぉ。本物のオネエじゃないわよぉ。本物の人間でもないし。(ハツ、一瞬固まる)笑いなさいよ、ここ笑うとこよ。ヒトがせっかくカラダはったギャグ言ってんだから。
笑えない。(と言いつつ笑ってしまう)
(何かを押し頂いて)ま、アタシはこれさえいただければ結構でござんす。
何?
ふっふっふ。ハッちゃん、スマホどうした?
ええええっ?
あいかわらずリアクションでかいねー。
返して。
やだ。(スマートフォンをいじりつつ)わーお、マジ色気のない機種。だめよ、女の子はもっとカワイイのにしないと。
女の子なんてトシじゃないし、いちばん安かったの、それが。お金ないもん。
そっか。じゃ今度キラキラにデコってあげるね。
もう、よけいなことしないで。返して。(少々むきになり)返してよ。
言っていい? さっきから後ろのファスナー全開よぉ。
ええええええっ?!
(大笑い)ウソ。いじりやすいわー。
ハツ、ちょっと不機嫌。タカ、笑うのをやめ、神妙にハツの様子をうかがう。それから、そっと彼女の後ろへまわり、背中から抱きついて甘える。
ご機嫌、なおして。
(笑ってしまう)まったく。調子いいんだから。
当然よ、俺プロだもん。
女のお客さんも来るの?
たまにね。みんなハッちゃんよりブスだけど。
(あきれ顔)今のお世辞一つで、おいくら?
あ、今のはお通し。こっから後が高いのよ。
(吹き出す)よくもまあ、しゃあしゃあと。(スマートフォンに手をのばす)返して。
待って、もうちょっと……オッケー。完了。
何が?
登録。(自分とハツを交互に指し)アタシたち、もう、おともだち。うふっ。
「うふっ」て、何それ、勝手に?
(ハツにスマートフォンを返しつつ)いつでも連絡して。飛んでくから。
来なくていい。
ガーン!(と倒れ、ぱっと飛び起きて)なんつって。
立ち直りはやー。
連絡あった?
誰から。
ダンナ。
(一瞬、虚を突かれるが)ない。
そう。
でもね、また引き落とされてたの、お金が。だからまだ生きてると思う。
入れてるの、お金。ダンナのために。
当たり前でしょ、私が入れなくてどうするの。なんか今日タカ君、ホント変よ。どうしたの?
間。
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登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

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