第二幕第六場(1)

文字数 411文字

喪服姿のハツ、段の上の封筒に歩み寄り、手に取り、客席の一点を見やる。
ユウキ先生……?
ハツ、深々と一礼する。
ええ、大丈夫です。意外と落ち着いてますでしょう。自分でも驚いてるんです。自分が、あまり、驚いてないことに。

(封筒を見つめ)このお金、ありがたく使わせていただきます。助かります。お葬式と病院と、両方だから。

すみません、先生の分まで。でも……、いいですよね。もともとあの子が、身を削って作ったお金なんだから。

リキ、浮かび上がる。雨傘を手にしている。

途方に暮れてました。連絡の取りようがなくて、居場所の探しようがなくて。

(ふっと笑う)ばかね、私。そんなに遠くへ行くはず、なかったんです。あの子が離れられるわけなかったんです、あの公園の噴水から。

ゲン、浮かび上がる。
リキ、ゲンに、雨傘を差しかける。
なんで……?
(黙っている)
なんで、ここへ、帰ってくるんですか。
行く所が……なくてね。
俺もです。
ゲン、リキを見つめる。
ごめんね。
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登場人物紹介

リキ(力) 若い男。

タカ(高) 若い男。リキの「同居人」。

ゲン(源) 若くない男。タカの「客」。

ハツ(初) 若くない女。ゲンの妻。

ナツ(夏) 少女。

リキ&タカ(二人同時に)

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