第一幕第七場
文字数 750文字
間。
(堰[せき]を切ったように)
私、家中ひっくり返して探したんです、主人の置いていった背広のポケットも全部裏返しました、そしたら、やっぱり、出てくるんですね、その手のお店の、何なんでしょう、怪しいハートマークの入ったカードなんかが、用心深いあの人だってうっかりってことはある、ううん、うっかりは私よね、ずっと気がつかなかった、風俗なんてね、普通の女は、主婦は、一生縁なんかないの、だから頭の中だけで、ぐるぐる、ぐるぐる、想像してたんです、どんなものなんだろうって、そしたら……そしたら……
先生。私は、憎む相手が欲しかったんです。憎んで憎んで、恨んで恨んで、この爪でかきむしって、ののしって、死ねばいいと思える相手が欲しかったんです。それが、こんな……こんな……
リキ、タカ、浮かび上がる。
この際、はっきりうかがっておきます。リキ君にはこれ以上近づかないほうがいいって、どういう意味ですか。私には、妻として、主人のことを、主人に関わった人のことを、知る権利、ありますよね? リキ君が「メンタルな問題を抱えている」って、どういう意味ですか。誰だってね、精神的な問題の一つや二つ、抱えてますよ。とにかく、話してください。いつものお礼の額ではご不満だっておっしゃるのなら、(封筒をとり出す)これで。私だってこれくらいは用意できます。いいえ、たとえ飲まず食わずになったって用意します。
教えてください。あの子の、何が、問題なんですか?
教えてください。あの子の、何が、問題なんですか?
ハツ、消える。