セリフ詳細

もったいないなあ、俺の裸、キレイなのに。料金同じですよ。そんなに急がなくても。二時間あるのに。――(ふたたび脱ぎ始めるが、また手を止めて)下もいいって、どういうこと? 口だけ? まあ、じゃあ、シャワー浴びていただけますか、うちの店そういう決まりなんで。――それもなし? あ、そ。べつにいいけど。で? どうします?(小馬鹿にしたように)お手々つないで添い寝でもしますか?――話? 話が聞きたいって、俺の?(笑い出す。長く尾を引く笑い。不意に笑いやめて)おたく、警察の人?

作品タイトル:【戯曲】沈める町

エピソード名:第一幕第一場(1)

作者名:未村 明(ミムラアキラ)  mimura_akira

78|恋愛・ラブコメ|完結|44話|27,519文字

戯曲, 脚本, 現代, 恋愛, 家族, 機能不全家族, 切ない, R15, LGBTQ, 悲恋

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「この町も、沈んでいるんです。誰も気づいていないだけなんだ。きっと、誰も空を見上げないからですよ」
新宿二丁目で荒稼ぎするレントボーイ(男娼)のタカを、心理カウンセラーのユウキが訪ねてくる。ユウキは失踪したクライアントのサラリーマン、ゲンの行方を探していて、かつてゲンに買われたことのあるタカに情報を求めたのだが、タカは挑発と嘲笑をくりかえすばかりで、なかなか心を開こうとしない。
一方、ゲンの妻のハツは、生活のために始めた清掃のアルバイトで、物静かで優しい青年リキと出会う。ハツにはリキが心の支えになっていくが、それを知ったユウキは驚き、リキをハツに会わせまいとする。
タカはリキの自称「同居人」だった。それどころか、一見正反対の性格のこの二人には、さらに深い秘密があったのだ。

心の中に住む、他人。
〈本当の自分〉が見えないまま、それでも人は、人を愛する――。
樋口一葉の名作『にごりえ』を21世紀の新宿二丁目に置き換え、北フランスに伝わる海に沈んだ幻の都市イスの伝説と交錯させた、サイコサスペンス・ファンタジーです。

*2006年度文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作(優秀賞は該当作なし)
※「実村文」名義
『新鋭劇作集 19巻』(日本劇団協議会、2007年)に収録されましたが、その後大幅に改訂。ここに載せてあるのが決定版です。

舞台写真は2009年に上演したときのものです。
【配役】
リキ……高義治 Taka Yoshiharu
タカ……川上英四郎 Kawakami Eishiro
ハツ……壱岐照美 Iki Terumi
ゲン……宮崎稲穂 Miyazaki Inaho

上演記録の詳細はこちらにあります↓
https://www.unit-sala.asia/works2/sunken-city/