第二幕第五場(1)
文字数 556文字
リキ、封筒を客席に向かって差し出す。
すみません、突然で。――そう、です。引っ越し先は、決まってないです。今の所も家賃ためてて……、でも夜の、工事現場のバイト入れたんで、あの、横で赤い電気の棒振るやつです。当分それで。――寝るのは、昼間寝ますよ。ネットカフェとか、図書館とかで。
これ(封筒)ですか。これは、だから、玉代[ぎょくだい]、です。ゲンさんが俺を買ってくれたときの。――そうですけど、どうしても返したいんです、ハツコさんに。――直接なんて。どんな顔して渡すんですか。無理ですよ。
俺がバカだったんです。甘えすぎてました。これ以上、……
これ以上、俺といると、……
あの人にまで、なんか俺の、ヤバいのがうつりそうっていうか、……(かすかに笑う)
それと、これは(別の封筒をとり出す)先生に。お世話になりました。――受けとってください。お願いします。計算したんです、先生が俺たちの話聞いてくれた時間、カウンセリングとして払うと、いくらになるのか。あの、高いん、ですね、カウンセリングって。こんなんじゃぜんぜん足りないんですけど、せめてこれだけでも。
間。