その23 上向き人生

文字数 781文字

「学校は?」

「その時から行ってません。多分、卒業はさせて貰えると思います」

「勉強はどうしてるの」

「一応、不登校の子を対象にした通信教育を受けてます」

 三田くんは彼女を小学生扱いしない。なので、わたしもそれに倣う。

「孤独じゃない?」

「いえ、全然。一応その通信教育も、”スクール”、があって、定期的に、”リアル校舎”、に行くんですよ。そこに来る人たちって似たり寄ったりの境遇なので気楽です」

「オフ会みたいなもん?」

「まさしく、そうです」

 三田くんはわたしよりも突っ込んだ質問をする。

「意外と明るいよね」

 彼女はしばらく考えた後、答え始めた。

「最近、ですよ。アルジョさんのブログを読み始めた頃あたりからですね、どんよりが消え始めたのは」

「え、あれ読んで上向きになるの?」

「失礼だね」

 ノネちゃんが幼く笑って続ける。

「上向きになりますよ。そこんとこはアルジョさんとわたしでしか通じ合えない部分ですよね」

「ね」

「女子の気持ちは、分からん」

「いやいや、”女子”、というくくりの話じゃないんだけど」

「わたしも研究者狙ってたんですよ。先にやられちゃった、って感じですね」

「あ、そうなんだ。じゃ、一緒にやる?」

「やりたいですね。でも、わたしはあんまり難しい本は読んでないんですよね」

「わたしだってそうだよ。自分の感性に引っ掛かる本が基本。たまたまそれが学術書だった、ってだけで。それよりも・・・」

「はい」

「いじめをした相手のこととか、吹っ切れたの?」

「ええまあ」

「すごいね」

「そうですか?」

「だって、腕を切断してまで」

「いえ。そこは結局自分でやっちゃった部分ですから。むしろ、両親にすごく申し訳ないです。義指も高いですし、それよりも自殺未遂の時、各方面への折衝でほんとに迷惑かけて。なんとか賠償の請求はされずに済んだんですけど・・・それにいじめた子らには今の所会うことも無いので」
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