その15 彼氏・彼女でない何か

文字数 362文字

 土曜の朝。がらんとした三田線の、岩波ホールの出口から地上に登ると、もう真夏の日差しがそこにあった。
 たいして街路樹もないのにセミの声が盛大だ。

「三田くんはいつもどこに遊びに行くの?秋葉原とか?」

「いや。近いから大抵池袋で済ませてる。遊ぶったって、友達と自転車で行って結局ファミレスのドリンクバーで居座るだけだからどこでも同じなんだけどね」

「三田くんのツレって誰だっけ?」

「釜田」

「あれ?でも教室で釜田くんとしゃべってるのなんて、見たこと無いよ?」

「学校で話し相手を求めるなんて面倒なことしないよ。それより釜田に長坂さんのこと、しつこく訊かれたよ」

「何??」

「付き合ってるのか、って」

「何て答えたの?」

「違う、って」

 ぶっ、と思わず吹き出してしまった。

「三田くんってやっぱりおもしろい」

「事実でしょ」

「ますます、おもしろい」
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