その35 安息夜話

文字数 538文字

 結局泊めてもらうことになった。

 当然だけれどもわたしはお客さん用の布団を出して貰い、悠子さんの部屋で一緒に寝る。

「姉弟仲いいですね」

「そう?見てのとおりケンカばかりだよ」

「いえ、すごく羨ましいです」

「・・・お母さんのこと聞いたよ。大変だろうけど・・・こんな家でよければいつでも遊びに来てね」

「ありがとうございます」

「代わりにと言ったらなんだけど、太郎と仲良くしてやってね」

「はい」

「あいつ、飄々として見えるけど、昔は色々あったんだ・・・小学生の時は自閉症だったんだよね」

「三田くんがですか?」

「うん。それで、特殊学級で他の生徒とは別のクラスで授業受けてさ。今でもすごいコンプレックス持ってるんだよ」

「知りませんでした・・・・」

「だから、結構あいつは努力で今の性格を作り上げてきた部分があるんだ。多分みつきちゃんといると張り詰めたものが少し落ち着くんじゃないかな」

「そうでしょうか」

「うん。まあ、”彼女”、になってやってなんてのは図々しくて言えないけど、友達でいてやってよ。懲りずにさ」

「わたしの方こそ三田くんが居てくれてほんとに良かったって何度も思いました」

「みつきちゃんはいい子だよ。わたし、好きだな」

「わたしも悠子さん好きになりました」

 久し振りに安堵して眠りについた。
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