その２８　天使

　話すほどに滝田さんが純粋な研究者だということが分かった。
　わたしの提案にも打算ではなく、真に研究者としての興味から乗ってくれたと理解している。
　なので、動きは迅速だった。

　翌週にはオープンキャンパスならぬ、”オープンラボ”、の体(てい)で3人を研究室に招待してくれ、その時の様子をすぐにHPにアップしてくれた。
　
　大学院生たちとディスカッションする光景の他、3人で映った写真も掲載された。

　なんと言ってもノネちゃんの姿は衝撃だろう。
　12歳にしては高い身長と、キュロットからすらりと伸びた足に白のデッキシューズを履いて似合うセンス。
　左腕が無い事すら、却って常人には決してあり得ない身体のバランス美を引き出している。

　そして、顔に至っては、目や鼻といったパーツの配置が完璧。
　
　女のわたしが言うのも変だけれども、まるで天使のようだ。

　予測を超えて、というか、案の定というか、ここ10年ほどで数件しかなかったHPのコメントに、たった3日で100近い投稿があったそうだ。
　わたしは滝田さんにお礼のメールを送った。

”本当にありがとうございました。コメントもいっぱいありますね。ノネちゃん効果ですね”

　返信

”こちらこそ。学部生向けの夏季講座も出席率が倍増しました。あと、コメント、よく見てください。アルジョさん効果もすごいですよ”

　促されてコメントを改めて１つ１つ見ていく。

　ほんとだ。

　ちゃんとレポートの内容に対しての意見・指摘がばんばんある。

　大学生って、意外と勉強してるんだね。