その40 これも告白

文字数 512文字

 それは突然やって来た。

「長坂さん」

 例によって教室の隅っこで三田くんに声を掛けられた。いつもと違うのは、紀伊國屋書店の細長い紙包みを手渡されたこと。何これと言いながら開けると青のフリクションと替インクが入ってた。

「いつも使ってるでしょ?」

「うん。ありがと。っていうか、何、これ?」

「フリクション」

「いや、何の目的で」

「誕生日でしょ?」

「今日じゃないけど」

「でも、10月でしょ?」

「まあ、そうだけど・・・・」

 今日は10/1、誕生日は10/31。ブレ幅が大きすぎる。

「わたし、誕生日教えたっけ?」

「いや。でもブログに書いてあったよ。来月1歳年を取りますって」

「あ、そっか・・・・しまった」

「それでさ、別に今のままでもいいんだけど」

「ん?」

「せっかくだからさ、俺たち、付き合わない?」

「へ?」

「嫌なら別にいいけど」

「・・・それってわたしが好きってこと?」

「好きとか嫌いとかそういうことじゃないんだけど。ただ単に付き合ったらいいかな、と思って。まあどっちでもいいんだけど」

「・・・別に、いいけど」

 周囲の男女数人が聞くともなしに聞いていたようだ。彼らは困惑してい
る。
 
 今の遣り取りの内容では話のタネにもなりはしないだろうけど。
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