その32 男の、友達

文字数 453文字

「長坂さん、大丈夫?」

 3日間学校を休んだわたしに声を掛けてくれたのは三田くんだけだった。かいつまんで事情を説明する。

「結局、母親を入院させた。まだ自殺を図る恐れがあるから」

「でも、うつ病なんでしょ?」

 わたしは首を振る。

「多分、統合失調症。わたしも投げやりになって、ここ1年ほど1人で通院させてたのがまずかったよ。医者は母親の、”自己申告”、だけで病状を判断してた」

「入院費用は?」

「父親の死亡保険金が、まあ、まだかなり残ってるから」

「でも、預金の名義はお母さんでしょ?もしお母さんに判断能力がないってことになったら、未成年の長坂さんがそのままお金を引き出し続けられるの?」

「医者を、脅した。余計なこと、あちこちに言うな、って。先生の診断ミスでしょ、って。そもそも判断能力どころか生活能力ももともと無かったんだから、今更」

 一気にまくしたててから、はっとした。

「ごめん、三田くん。心配してくれてるのに・・・・」

 いいよ、と三田くんは首を振る。

「もし、嫌じゃなかったらだけど」

「え」

「うちに遊びに来ない?」
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