その14 ふたりで神保町
文字数 601文字
"no name"、のコメントは続いた。
三田くんがわたしの話を聞いてくれたお蔭であまり気にならなくなった。
今のところ、no nameに同調するような人もいない。
「長坂さん」
夏休みに入る直前の金曜、三田くんが珍しく教室の前あたりで声を掛けて来た。数人の生徒が2人を振り返る。
「なに?」
「明日さ、俺も神保町行っていい?」
「え?」
「欲しい本があるんだよね」
「駅前の本屋は?」
「無いよ。”苺畑の午前五時”、って本なんだけど」
「小説?」
「うん。作者はビートルズと共に人生を歩んできた人でね」
「ああ、”ストロベリー・フィールズ”、なんだ」
「そう。でも、出版されたのが1980年代なんだ」
「文庫になってないの?」
「分かんない。仮になってたとしても、その辺の本屋には置いてないよ」
「うーん、探せるかなあ」
「なんか、ネットで買う気分にはならないんだよね、その本」
「三田くんはその作者が好きなの?何て人?」
「松村雄策。その人のことは全然知らないんだけど、俺の好きなバンド繋がりで辿っていったらこの本に行き着いて。その人は音楽雑誌のライターもやってたんだ」
「ふうん」
「長坂さんは古本屋詳しいでしょ」
「まあ。置いてある本の傾向は分かるよ」
「じゃあ、頼むよ」
「ポピーのバイトは?」
「長坂さん、どうせポピー行くでしょ?バイトは15:00からだから、間に合うように行ってくれたらありがたいな」
「同伴、みたい」
「何でもいいよ」
三田くんがわたしの話を聞いてくれたお蔭であまり気にならなくなった。
今のところ、no nameに同調するような人もいない。
「長坂さん」
夏休みに入る直前の金曜、三田くんが珍しく教室の前あたりで声を掛けて来た。数人の生徒が2人を振り返る。
「なに?」
「明日さ、俺も神保町行っていい?」
「え?」
「欲しい本があるんだよね」
「駅前の本屋は?」
「無いよ。”苺畑の午前五時”、って本なんだけど」
「小説?」
「うん。作者はビートルズと共に人生を歩んできた人でね」
「ああ、”ストロベリー・フィールズ”、なんだ」
「そう。でも、出版されたのが1980年代なんだ」
「文庫になってないの?」
「分かんない。仮になってたとしても、その辺の本屋には置いてないよ」
「うーん、探せるかなあ」
「なんか、ネットで買う気分にはならないんだよね、その本」
「三田くんはその作者が好きなの?何て人?」
「松村雄策。その人のことは全然知らないんだけど、俺の好きなバンド繋がりで辿っていったらこの本に行き着いて。その人は音楽雑誌のライターもやってたんだ」
「ふうん」
「長坂さんは古本屋詳しいでしょ」
「まあ。置いてある本の傾向は分かるよ」
「じゃあ、頼むよ」
「ポピーのバイトは?」
「長坂さん、どうせポピー行くでしょ?バイトは15:00からだから、間に合うように行ってくれたらありがたいな」
「同伴、みたい」
「何でもいいよ」