その19 no name、の認証
文字数 649文字
土曜日。
三田くんとわたしは約束の15分前に三田線神保町駅に到着し、岩波ホールの出口の日蔭でしばらく時間を潰した。
「行こっか」
10:00きっかりに着けるタイミングで交差点を横断し、すずらん通りに入る。そのままのスピードを維持して東京堂書店の自動ドアをくぐり抜けた。
ざっ、と店内を見回した後、文庫コーナーに近付く。
「意表を突く容姿か・・・・」
三田くんはつぶやきながら、低い書棚越しにきょろきょろと目標を探す。
わたしも探す。
けれども、そもそも女性客がいない。
いるのはいかにも本好きそうな男性ばかり。
もう一回りしようとしていると、背後から声を掛けられた。
「”ある女子高生”さんですか?」
少しかすれた、けれども耳障りの良い声にふっ、と振り向く。
「”no name” です。はじめまして」
確かに意表を突かれた。
わたしの目の前に立っているのは背中まで黒髪を伸ばした少女。
背は高いけれども、はっきりとわたしより年下と分かる幼い顔立ち。
そして、美人だ。
あるいは将来、ものすごい美人になることが確約されている美少女という表現もできる。
あまりの整った顔立ちに茫然としていたわたしは、彼女の瞳の奥の黒の深さに耐え切れず、すっと視線を外すために首から下を見る。
淡い夏の花がプリントされたTシャツの上に白いカーディガンをはおっているのかと最初は思った。
けれども右腕は袖を通している。
左腕が、無かった。
よく見ると右手には白い手袋をつけている。
「義手なんです」
完全に、意表を突かれた。
三田くんとわたしは約束の15分前に三田線神保町駅に到着し、岩波ホールの出口の日蔭でしばらく時間を潰した。
「行こっか」
10:00きっかりに着けるタイミングで交差点を横断し、すずらん通りに入る。そのままのスピードを維持して東京堂書店の自動ドアをくぐり抜けた。
ざっ、と店内を見回した後、文庫コーナーに近付く。
「意表を突く容姿か・・・・」
三田くんはつぶやきながら、低い書棚越しにきょろきょろと目標を探す。
わたしも探す。
けれども、そもそも女性客がいない。
いるのはいかにも本好きそうな男性ばかり。
もう一回りしようとしていると、背後から声を掛けられた。
「”ある女子高生”さんですか?」
少しかすれた、けれども耳障りの良い声にふっ、と振り向く。
「”no name” です。はじめまして」
確かに意表を突かれた。
わたしの目の前に立っているのは背中まで黒髪を伸ばした少女。
背は高いけれども、はっきりとわたしより年下と分かる幼い顔立ち。
そして、美人だ。
あるいは将来、ものすごい美人になることが確約されている美少女という表現もできる。
あまりの整った顔立ちに茫然としていたわたしは、彼女の瞳の奥の黒の深さに耐え切れず、すっと視線を外すために首から下を見る。
淡い夏の花がプリントされたTシャツの上に白いカーディガンをはおっているのかと最初は思った。
けれども右腕は袖を通している。
左腕が、無かった。
よく見ると右手には白い手袋をつけている。
「義手なんです」
完全に、意表を突かれた。