第13話
文字数 1,537文字
GOOD BUG 2
才はあっという間に幹線道路を横断し切っていた。もと来た方を振り向く。音楽を流しながら街宣するトラックが遮るように渋滞で止まった。トラックの側面にあるスクリーンで優月が才に向かって歌い始める。彼女の新曲キャンペーンがこの町で一斉に始まったらしい。
― この世に溢れるNOを抱え
庭を追い出されても
世界は終わらなかった ―
「ふーん、ここまではそのままだね。この後はどうかしら。ずるい感じに変えちゃあいないだろうね。同じ悲しみが近くにあっても目を背ける癖を忘れないよ、お姉ちゃん」
弟は姉との遊びを思いついた。
先に僕が歌うから、優月の歌詞で正してみなよ。才は一拍ほど先に歌っていく。
「君が人殺しだからって 」
― 君が嫌なことばかりして ―
ふふっ、塗りつぶされていくのも悪くないよ
楽しいね
さあ次はどう消すのさ
「正義の弱虫たちに追い詰められても 」
― 優しい町の人を悲しませても ―
都合のいい世間を味方につけていたもんね
「君の希望のせいで」
― 君の悪魔のせいで ー
僕ではないってことなんだね。都合のいいコピペだな
― 綺麗な体がけがされたとしても ―
そこは残すんだね
「僕は恨みはしないよ 」
― 僕はもう許すよ ―
嘘だね。
「この世は化け物ばかり
YESで殺されればいいんだよ
君は太った正義の中でNOを歌えるか」
― この世は・・・・
・・・・NOを歌えるか ―
ここは変えなかったんだ。
「さあ、僕はゼロに生きる」
― さあ、僕の一歩を見て ―
見たくもないね
「every.YES」
― SAD.YES ―
悲劇のヒロインかよ。
才は少し遊びに疲れた。街宣トラックは渋滞で動かず、スクリーンいっぱいの優月は歌い続けている。
幻覚か現実なのか、才の境界は曖昧になった。
「お姉ちゃんとのこんな悪夢はよく見るんだよ、あの時以来ね。ずっとだから、ボクには強い抗体が出来ているのさ。負けないよ。
ふふっ。逆に慣れ過ぎてよくわからないんだ。
今と過去が同じ雨になって止まないから、びしょ濡れだ。
しつこいんだから」
ニヤリと笑って、次は何処から入ろうかと考えながらリズムを取っていく。
「君のNOはすべて僕だけれども」
― 君のしたことは僕を助けたけれども ―
何だよ、急に自白しだしたりしてさ
「君が呼ぶ僕の名前を血の向こうに見失い」
― 君があるがままに叫んだダンスの向こうに ―
ポエムにしないでおくれ
「空さえ見えない場所で全てがちょうど手に乗るよ」
― 町の噂はけがれた肌に書かれて明日に散る ―
お、いいじゃん。嫌いじゃないよ
「悪い旋律の僕は求め続けるか弱き愛」
― 空さえ見えない場所で
追い詰められた ―
で、今ここに転がってますけどね
「every YES」
― SAD.YES ―
繊細なお涙ちょうだいだね
「この世界を僕に返してよ」
― この世界は君のものだよ ―
嘘だね
「SAD.YESを殺してあげる」
― every YESを拾ってあげる ―
ちょっと好き
街宣者の優月は満足したように動き出して走り去っていく。
才は背を伸ばすと、あちらこちらで痛みが叫びをあげた。生きている証だから、楽しかったが。でも少し悔やんでいたのかもしれない。
「「ハウリング・フラワーズがついに優月の前で演奏したんだな。ごめん」
小波たちと一緒にやりたくない理由などはなかったし、コンテストが怖いとかそんな考えなどでもない。
「色とりどりの嘘に飾られた世界をぶち壊したくなって、あの時みたいに・・・・。
もうまっぴらだ。
また、裁判官が僕を諭してくる。
あの時の判決文だって、生きていくには邪魔な物も多いってことを改めて蒸し返されただけだった」
才の刃は鞘を見失い自らの身体を切り裂き這いまわる。今も、ずっと。
「またあの時の法廷に出廷させられるよ」
才はあっという間に幹線道路を横断し切っていた。もと来た方を振り向く。音楽を流しながら街宣するトラックが遮るように渋滞で止まった。トラックの側面にあるスクリーンで優月が才に向かって歌い始める。彼女の新曲キャンペーンがこの町で一斉に始まったらしい。
― この世に溢れるNOを抱え
庭を追い出されても
世界は終わらなかった ―
「ふーん、ここまではそのままだね。この後はどうかしら。ずるい感じに変えちゃあいないだろうね。同じ悲しみが近くにあっても目を背ける癖を忘れないよ、お姉ちゃん」
弟は姉との遊びを思いついた。
先に僕が歌うから、優月の歌詞で正してみなよ。才は一拍ほど先に歌っていく。
「君が人殺しだからって 」
― 君が嫌なことばかりして ―
ふふっ、塗りつぶされていくのも悪くないよ
楽しいね
さあ次はどう消すのさ
「正義の弱虫たちに追い詰められても 」
― 優しい町の人を悲しませても ―
都合のいい世間を味方につけていたもんね
「君の希望のせいで」
― 君の悪魔のせいで ー
僕ではないってことなんだね。都合のいいコピペだな
― 綺麗な体がけがされたとしても ―
そこは残すんだね
「僕は恨みはしないよ 」
― 僕はもう許すよ ―
嘘だね。
「この世は化け物ばかり
YESで殺されればいいんだよ
君は太った正義の中でNOを歌えるか」
― この世は・・・・
・・・・NOを歌えるか ―
ここは変えなかったんだ。
「さあ、僕はゼロに生きる」
― さあ、僕の一歩を見て ―
見たくもないね
「every.YES」
― SAD.YES ―
悲劇のヒロインかよ。
才は少し遊びに疲れた。街宣トラックは渋滞で動かず、スクリーンいっぱいの優月は歌い続けている。
幻覚か現実なのか、才の境界は曖昧になった。
「お姉ちゃんとのこんな悪夢はよく見るんだよ、あの時以来ね。ずっとだから、ボクには強い抗体が出来ているのさ。負けないよ。
ふふっ。逆に慣れ過ぎてよくわからないんだ。
今と過去が同じ雨になって止まないから、びしょ濡れだ。
しつこいんだから」
ニヤリと笑って、次は何処から入ろうかと考えながらリズムを取っていく。
「君のNOはすべて僕だけれども」
― 君のしたことは僕を助けたけれども ―
何だよ、急に自白しだしたりしてさ
「君が呼ぶ僕の名前を血の向こうに見失い」
― 君があるがままに叫んだダンスの向こうに ―
ポエムにしないでおくれ
「空さえ見えない場所で全てがちょうど手に乗るよ」
― 町の噂はけがれた肌に書かれて明日に散る ―
お、いいじゃん。嫌いじゃないよ
「悪い旋律の僕は求め続けるか弱き愛」
― 空さえ見えない場所で
追い詰められた ―
で、今ここに転がってますけどね
「every YES」
― SAD.YES ―
繊細なお涙ちょうだいだね
「この世界を僕に返してよ」
― この世界は君のものだよ ―
嘘だね
「SAD.YESを殺してあげる」
― every YESを拾ってあげる ―
ちょっと好き
街宣者の優月は満足したように動き出して走り去っていく。
才は背を伸ばすと、あちらこちらで痛みが叫びをあげた。生きている証だから、楽しかったが。でも少し悔やんでいたのかもしれない。
「「ハウリング・フラワーズがついに優月の前で演奏したんだな。ごめん」
小波たちと一緒にやりたくない理由などはなかったし、コンテストが怖いとかそんな考えなどでもない。
「色とりどりの嘘に飾られた世界をぶち壊したくなって、あの時みたいに・・・・。
もうまっぴらだ。
また、裁判官が僕を諭してくる。
あの時の判決文だって、生きていくには邪魔な物も多いってことを改めて蒸し返されただけだった」
才の刃は鞘を見失い自らの身体を切り裂き這いまわる。今も、ずっと。
「またあの時の法廷に出廷させられるよ」