パレード潰し~II回目~(2)
文字数 845文字
辺りは白い霧に包まれ、私たちはたちまち影絵になっていく。
カヲリさんは依然、突っ立ったままだ。あれ、頭が、ある。でもそれは随分と小さく……
とカヲリさんが発する。
霧が流れ、カヲリさんがこちらを見ているのだとわかる。だけどこちらを見ているのは、カヲリさんの千切れた首の上に乗っかるピエロだ。うはうは、とおどけて見せた。
草里は、さっき飛び上がったきりまだ、どこにも下りてくる気配もない。消えてしまった?
はあ、はあ。わたしの息。荒くなる。動けない。回りでは物音一つしない。わたしの息の音だけ。どさ、っと頭をなくしたカヲリさんが倒れる。いや、カヲリさんは立っている。わたしの隣で、シヲリさんが倒れている。
はあ、はあ。わたしの息。荒くなる。動けない。回りでは物音一つしない。わたしの息の音だけ。どさ、っと頭をなくしたカヲリさんが倒れる。いや、カヲリさんは立っている。わたしの隣で、シヲリさんが倒れている。
ちょっ……なんでこんな展開。全然、だめじゃない。だめだ。わたし、何が今日は戦えるだ。
わたしの足はがくがくとして、倒れるシヲリさんの横にへたり込んだ。
ああ。こんな間近で見たくなかった。霧のなかでもぞもぞと動き、影絵のなかでシヲリさんの顔面がまるでカーテンを開くようにぱかっと開き、そこからうはうはっと言って小さなピエロが飛び出す。いち、に、さん、よん……どれだけ。シヲリさんの身体のなかに住んでいましたとばかりに、ピエロがうはうはシヲリさんの顔を開けて行進してくる。
霧が流れて視界が開ける。するとピエロたちは皆一様に、シヲリさんの顔を模したお面を付けている。
シヲリさんの顔が十、二十、三十、……と陽気に陽気に行進してどこかへ去っていく。
どぷっ。
最後のピエロが行進について行ってしまうと、待ってーとばかりに、シヲリさんの頭そのものが千切れて、千切れた部分から足が生えて、ひょこひょこと行進についていく。残された身体から、どぷどぷと血が流れだし、地面を影に染めていく。
わたしは立ち上がろうとするけれど、足がしびれて、笑けて、涙が出てきてどうしょうもなかった。