ソラミミとピエロ斬りの草里楓(3)
文字数 695文字
わたしのように深く、長く潜っていると、夢のなかから何かにつけてこられることもあるのだ。わたしは、十一にあの宝石のことがあって以来、空の領主というのにしばらく付け狙われてきた。一度、実際にその遣いがわたしの家に来たことがあった。遣いはわたしに風船を差し伸べてきて、わたしを空の領主のとこまで飛ばそうとしたのだ。何も知らないわたしが手を伸ばしたとき、御婆ちゃんが来て身代わりになった。
すぐ、御婆ちゃんは空で処刑になった、と手紙が来た。実際には、奥の部屋で御婆ちゃんが亡くなっているのを、帰ってきたオトウさんオカアさんが見つけた。わたしは夢の入り口で、風船を持った御婆ちゃんが空を上っていくのを何もできずに見ていた。オトウさんは、御婆ちゃんは天寿だっただけだとわたしに言い聞かせた。
それからも何度か遣いに会った。遣いは頭が悪く、わたしは付いていくふりをして途中で遣いから石をくすねた。石は、ほとんど色のないつまらないもので、持ち帰る前に消えてしまうようなものばかりだった。あのときの空は今、どの辺にあるのだろう。今はまた、わたしの行く空の景色は違っている。今は…………
もうでこぼこの草原をすぎて峠の頭が見えてきている。ピエロ斬りを揺らしながらそっちへ歩いていく草里に背を向けて、家の方に走って戻った。