わたしの家に 小象が来たこと(3)
文字数 1,179文字
わたしが草里と一緒のクラスになったのは、この十六の年からだ。十二から十五までわたしは、同じ手わざ系の子ばかりを集めた少人数の学級にいた。わたしは何も知らなかったから、草里に気兼ねもなく打ち解けたけど、草里はそれまで一緒だった戦系の子らからは、ちょっと近寄り難い存在だったらしい。あまりに腕が立つからとか、怒らせると恐いとか、ちらっと聞いたことはある。まあ、草里はちょっと変わった子だしだいぶ無茶な子と思ってはいたけれど。
廻れ右とかお手とかを繰り返していた草里。
小象がわたしを見つめている。ええと、廻れ、右? なんて。小象がくるっと右に廻る。言うこと、聞いてる……
またはしゃぐ草里。
草里はまた真剣な面持ちに。多少の苛立ちも見える。
学園は、パレードをほったらかしなんだよ? パレードに、どれだけの空や雲の集落が消されていると思っているの。確かに、そこに住んでいるのは人でない人でなしばかりよ。けど、わたしには人でなしにも小さな友達はいたんだ
草里の表情が今度は少しだけ、曇った。
草里ってときどき、とても悲しくて、独りなんだこの子は、って思うことがある。
草里は小象をまたぽんと叩いて、この子は運命の子。と真面目に呟く
わたしも、パレードは好きじゃない。うるさいし……華やかだし。あんな馬鹿馬鹿しいのがこの世界にのさばっているのは、好きじゃない。
草里は小象のおしりの方へぴょんと飛んで、玄関のドアノブに手を伸ばす。
部下……?
草里はちょっと番長的なところがある、とも耳にしてはいたけど(番長じゃなく委員長なのは本当だけど)、彼女のそういう面についてはこれまであえてあまり知らずにいた。見た目は背の低い、番長なんて威厳には程遠い普通の女の子なのに。
明日も学園は休みで、押入れの掃除をしようと思っていたのだけど。今日しておこう。
草里はもう行ってしまった。結局、押入れが小象の仮住まいになった。