密談
文字数 1,888文字
草里が姿を消すと幾らかその場の呪縛が解けたように、めいめいがふらふら、動き出す。窓の外を心配そうに見つめる子。椅子に座ってため息つく子、ただしゃがみこむ子。一方で本当に、食事、何にしましょう。最後の食事だし、そうね……とか言ってる子も、いる。
放っておけ、と、草里の後を追おうとするわたしに郡さんは言いかけたが、
とわたしの背を押してくれた。
それから、「いーな」「羨ましいわ。ま、ここは素直に譲るけど」と、他の女生徒らの声が聞こえた。
草里の部屋(元・入間の部屋)をノック・ノック。返事はないので、勝手に入る。
ベッドにうつ伏せている。
ソラミミ。こっちへ来て
何だか、気が咎める。もしかすると、こういう草里は見たくなかったのかもしれない。
いいから
そろそろと歩み寄る。草里は、やっぱり、そのままだ。泣いて……
わたしの隣に添い寝して
なんだろう。真面目に、へこんでるのだろうか。まさか。本当に、慰めてほしい?
わたしはベッドの縁に腰かける。
わたしはベッドの縁に腰かける。
突然起き上がった草里に、ベッドのなかに押し倒される。草里がわたしの上になり、見下ろしている。
確かに泣いてなんてまったくなかった。ただ、表情はふざけていなかった。
わたしにも、時間を超えて移動したことの仕組みまではわからない。それにあんなの、偶然だし……。
もしできたとしても、やはり来たときみたくこっちの時間の方は経過し、手遅れになってしまっているのでは、という不安もある。
草里は、黙っている。この沈黙が、嫌だ。
草里は、黙っている。この沈黙が、嫌だ。
草里はため息一つ、つく。
このあわいの地区には、学園が手を出さないような事を、積極的に請け負っている組織があるんだ。もちろん、相当な力なり実績なりがなければ入れない。そこがどういうとこかは……ピンキリだな。今は、要はどこでもいい。待遇が悪ければ、あとで別のとこに移ればいいしな。
さてその地下組織の連絡網については、峠のお菓子屋に聞いてくれ。幾つか調べ上げてくれているだろう
さてその地下組織の連絡網については、峠のお菓子屋に聞いてくれ。幾つか調べ上げてくれているだろう
草里の言うには、以前……パレード潰しを始めた辺りからもう、その件については相談していて、幾つかの地下組織を調べ上げてくれていたという。具体的な条件を示してきた相手もいたのだと。
だから、おやじも手を打ってくれているはず。ではある。
と言って、また草里はベッドに突っ伏してしまった。
覗きこもうとすると、また草里に引き込まれる。
あれ? 扉が開いている。そこに来ているのは、
――郡さん!
慌ててベッドから起き上がる。たぶん顔が真っ赤だ。
仲間はずれみたいな言い方。
責任重大だな。それは、そうかもしれないけど。