パレード潰し~II回目~(3)
文字数 1,076文字
誰もいなくなった。シヲリとカヲリの胴体があるだけ。どぷどぷと血が流れているだけ。ピエロももういない。
草里は、一体どこで戦っているのだ。
ひらひらと、何か落ちてくる。紙のピエロだ。随分壮絶な死に様の絵。でもやっと、一体……だけ? 見れば、周りのあちこちで、紙のピエロが舞っている。はっ。小象は。後ろを振り返ると、紙の山がある。そこにどんどん紙のピエロが降り積もっている。これは、草里の殺したピエロ? もうこんなに、殺していたのか。さすがは、草里だ。
草里は、一体どこで戦っているのだ。
ひらひらと、何か落ちてくる。紙のピエロだ。随分壮絶な死に様の絵。でもやっと、一体……だけ? 見れば、周りのあちこちで、紙のピエロが舞っている。はっ。小象は。後ろを振り返ると、紙の山がある。そこにどんどん紙のピエロが降り積もっている。これは、草里の殺したピエロ? もうこんなに、殺していたのか。さすがは、草里だ。
随分と高いところから声が聴こえ、一分くらい落ちる音が聴こえつづけ、ようやく草里が降ってきた。
降り積もったピエロの死体の紙の山がばさっと捌けて、小象が出てくる。
同じだ。模型だ。
同じだ。わたしは近くに転がっているカヲリさんのピエロ斬りをどっと持ち上げる。同じだよ。
同じだ。模型だ。
同じだ。わたしは近くに転がっているカヲリさんのピエロ斬りをどっと持ち上げる。同じだよ。
どぷっ。
なくなっていたはずのカヲリさんの本物の頭があった。それが今、シヲリさんと同じように随分遅れちゃったぁとでも言いたげに、胴体を離れたのだ。どぷどぷ流れる血のなか、頭はてけてけとどこかに駆けていく。一度立ち止まってきょろきょろとするそれに、わたしはピエロ斬りをぶちかました。外れた。カヲリさんの頭は、きょきょろしながらどこかへ行ってしまった。
わたしは、小象の模型に向き合い、そこからひょこっと顔を出したピエロ目がけて、今度は外さない。ピエロ斬りに切り開かれたピエロのなかから、小象の鼻を掴み、小象を引っ張り出す。抱きしめる。
チャリン。草里の手にはすでに黄色の鍵。
小象の無邪気な突進。パレードの象がずしん、ずしんとこちらに来ている。
草里は拳に力を入れる。
だめ。だめ……!
ぱぽーくしゅん
ああ。
ああー……
だめ。だめ……!
ぱぽーくしゅん
ああ。
ああー……
小象の姿はもうどこにもない。こちらにずしんずしんと向かってくる巨象の姿だけ。
どこが。どこかだ。前とまるっきり同じじゃないか。いや前よりわるいよ。二人死んでるよほら……
わたしはもう何も言わなかった。草里もしばらく何も言わずに佇んでいるようだ。
ずしん。ずしん。ああ、巨象の足音が心地いい。わたしの小象を踏み消した巨象の足音。
わたしはもう何も言わなかった。草里もしばらく何も言わずに佇んでいるようだ。
ずしん。ずしん。ああ、巨象の足音が心地いい。わたしの小象を踏み消した巨象の足音。
草里がわたしの肩をしかっと掴む。鍵を、廻した。