入間先輩の別荘地
文字数 794文字
雲を、夢を、抜ける。
草里は、わたしの後ろにいる。どれくらい時間が経った? 雲を抜けるわずかの間に見た夢だったのか。
草里がさっき、言った言葉……
草里がさっき、言った言葉……
しっかりとわたしに手を回しているけど、掴む力が弱い。まさか、やっぱり何かあった?
寝ている、のか。
完全に雲を抜けるとそこは、夜だった。やはり、時間が経過したのだ。場所、は?
はっとした。夜空の星々が近い。小象は、夜空を駆けている。
はっとした。夜空の星々が近い。小象は、夜空を駆けている。
勿論、夢の中で、空を飛ぶのは日常茶飯事だ。だけど、生まれてこのかた現実で空を飛んだことなんて、ない。急に恐くなる。小象から落ちれば、現実で飛べるはずなんてないわたしなんか、まっさかさまだ。地上は遠く薄っすらと見えている。
ぽつぽつと見えている灯かりは、人家の明かりだろうか。随分と少ない。あとは平原が広がっているばかりのよう。辺鄙なところには違いない。ここはもう、別荘地の近くなのだろうか。小象は、場所がわかっているようではあったけれど。
と、草里の指差した先に、一際明るく大きな灯かりが見えている。
小象は草里に促される前にすでにそっちに向けて降下を始めている。
ともあれ小象は確実に定めた目標に向かい、段々速度と高度を落としていくのだった。