再び夢の空で(3)
文字数 1,110文字
さっき、なんて……まさか。ソラミミのこと……まさか、ソラミミでしょう。それこそ。
草里の姿は、なかった。
背中に、草里の体温だけが、残されている。あたたかいようで、どこかつめたいその体温。
小象は今はのそのそと、やる気のない速度で一応の前進をしている。
こんなときに、夢に迷い込んでしまうなんて……。
しかも草里を、どこかに置き去りにしてきた。雲に入る前に、落っこちただけなのならいいけれど。夢と現のはざまで落っこちてしまったなら、大変なことになる。もう二度と見つけることができないかも。
背中に、草里の体温だけが、残されている。あたたかいようで、どこかつめたいその体温。
小象は今はのそのそと、やる気のない速度で一応の前進をしている。
こんなときに、夢に迷い込んでしまうなんて……。
しかも草里を、どこかに置き去りにしてきた。雲に入る前に、落っこちただけなのならいいけれど。夢と現のはざまで落っこちてしまったなら、大変なことになる。もう二度と見つけることができないかも。
ぱぽー……小象が動きを止めたので、わたしは降りて小象を引きながらとぼとぼと歩く。
辺り一面空しかない。歩く地面にも、空が映っているだけ。わたしと小象の影がそこで揺れている。
見たことのあるような、ないような空。
ふと高い高いところを飛ぶ、一体の飛行物。
泣いているもの。ふと、そんな気がした。どうしてここにいるの。ここはわたしの夢。わたしの夢に、迷い込んでしまったの?
それは、そのまま高い高いところを飛んで、行ってしまう。
それから、何かがわたしたちを見ている視線を感じる。四方から。取り囲まれている。
辺り一面空しかない。歩く地面にも、空が映っているだけ。わたしと小象の影がそこで揺れている。
見たことのあるような、ないような空。
ふと高い高いところを飛ぶ、一体の飛行物。
泣いているもの。ふと、そんな気がした。どうしてここにいるの。ここはわたしの夢。わたしの夢に、迷い込んでしまったの?
それは、そのまま高い高いところを飛んで、行ってしまう。
それから、何かがわたしたちを見ている視線を感じる。四方から。取り囲まれている。
音楽が聴こえてくる。まただ。あの、パレード……禿げた奇形のどうぶつたちが、ひょこっひょこっと顔を出し、ぴょんぴょん不規則な踊りを踊って回り始める。
この小象は、わたさない。
なにを言ってる、仲間だよ。――仲間? ――みんな、仲間さ。おまえだって、そうさ。おれたちはおまえの仲間だ。迎えに来てんだ。その小象は、おれたちのパレードの象様だよ。――そんな、馬鹿な。この小象はわたしの小象だ。わたさない。――どうして? おまえは、パレードになれるんだ。おまえと小象をパレードに迎えに来てんだ。みんな、仲間さ。一緒に行こうよ。――わたしが、パレードに……馬鹿な!
なにを言ってる、仲間だよ。――仲間? ――みんな、仲間さ。おまえだって、そうさ。おれたちはおまえの仲間だ。迎えに来てんだ。その小象は、おれたちのパレードの象様だよ。――そんな、馬鹿な。この小象はわたしの小象だ。わたさない。――どうして? おまえは、パレードになれるんだ。おまえと小象をパレードに迎えに来てんだ。みんな、仲間さ。一緒に行こうよ。――わたしが、パレードに……馬鹿な!
わっははは! 禿げの奇形のどうぶつたちは一層笑いを増す。おれたちが消えれば、おまえも消えちまう。気づいてるんだろう本当は!
奇形のどうぶつたちが一様にどんよりした目つきになりわたしを重たく見据える。空もどことなく重たくなった。
空が、収束する。黒が点々と現れる。奇形のパレードは、収束の外側にいてまだそのどんより曇った目でわたしを見ている。なんて悲しげな目……わたしと小象は、収束に飲みこまれていく。わたし、どうしてあんなこと言ったのだろう。だけど草里は……そう言っていた。存在を否定したんだ。黒ばかりになる。わたしは、悲しかった。