第6話

文字数 503文字

 長い回廊にみっつの人間が向き合って立っていた。
「見たかね、薔薇侯」
 山のように巨大で筋骨逞しい大男がひとりに尋ねた。
「もちろんですとも剣元帥」
 尋ねられた深淵色の長衣を着た男が優雅にうなずいて、隣の男を見た。
「これは、忌々しき事態と考えていい」
 深紅の法衣を着た最後の人間が憎悪のこもった声で言う。
「これだけの魔力をもつものが辺境に現れたこと。そして、かの者に協力したこと。どちらを取っても捨て難い事態である」
 法衣の人間が手に持った資料を残りの二人に見えるように開いた。
「事態は早急に解決しなければならない」
 空中に浮いた資料を睨んでいた三人に、見るからに緊張が走った。
「して。どうするというのだ? 法典枢機卿。かの者が逃げ込んだのも、かの者が現れたのも我らが領土ではない」
 巨大な男が噛み潰すように言うと、法衣の人間が凶暴な笑みを浮かべた。その周囲に赤い光の玉がいくつも浮かび上がる。
「何を腑抜けているのだ遠征者。我々の正規法を忘れたのか?」
 その言葉を聞いて、軍服をたなびかせて大男は踵を返し笑い声を上げた。
「この件、我が”奪還軍”が、速やかに解決いたそう」
 そう宣言して、誰もが忽然と消えていた。
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