第14話
文字数 637文字
宴会場となっていた居間に、楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
「いやぁ、お嬢があんなに楽しそうにしているなんて、あっしはうれしいです」
その場で酔いつぶれていない何人かが頷いた。祖父、宗孝は目を細めてお猪口をあおる。
「あれから、あの子には辛い時間が経った。もう忘れてもかまわないだろう」
若干反響して聞こえる笑い声は、確かに愛して止まない孫娘の声だ。目を閉じて、宗孝は少しだけ満足そうに口角を持ち上げた。
「ええ。もう十分でさぁ。若も、美恵の姐御も、それを望んでいるでしょう」
大岡が、目頭を押さえながら言った。
「お嬢は、もう幸せになっていい頃です! ああして、友達と遊んで、ちょいとばっかし悪いことして、そうして大人になっていっていいんです」
熱く胸の内を切望するように叫んだ大岡に、誰もが頷いて賛同していた。この場の誰もが、必要以上に自責を繰り返した少女の幸福を願っていた。
「あれは、事故だった。それに巻き込まれただけの美鈴が、悔いる必要は端からなかったのさ。それを、あの子は自分のせいにしちまいやがった……」
珍しく口調の荒れた宗孝は、大岡が酌した酒を飲む。
「過ぎたことさ。もう、あの子は笑っていいのさ。今日は、それを願った席だしよ」
へいとその場の大人はそろえて頷いた。
「もう、過ぎたことさ。だから、もう忘れさせては、くれねぇかい?」
宗孝は誰にも聞こえない声で、小さくつぶやいた。答えるはずの声は、もうこの世界には居ないと知っていても、宗孝は尋ねずには居られなかった。
「いやぁ、お嬢があんなに楽しそうにしているなんて、あっしはうれしいです」
その場で酔いつぶれていない何人かが頷いた。祖父、宗孝は目を細めてお猪口をあおる。
「あれから、あの子には辛い時間が経った。もう忘れてもかまわないだろう」
若干反響して聞こえる笑い声は、確かに愛して止まない孫娘の声だ。目を閉じて、宗孝は少しだけ満足そうに口角を持ち上げた。
「ええ。もう十分でさぁ。若も、美恵の姐御も、それを望んでいるでしょう」
大岡が、目頭を押さえながら言った。
「お嬢は、もう幸せになっていい頃です! ああして、友達と遊んで、ちょいとばっかし悪いことして、そうして大人になっていっていいんです」
熱く胸の内を切望するように叫んだ大岡に、誰もが頷いて賛同していた。この場の誰もが、必要以上に自責を繰り返した少女の幸福を願っていた。
「あれは、事故だった。それに巻き込まれただけの美鈴が、悔いる必要は端からなかったのさ。それを、あの子は自分のせいにしちまいやがった……」
珍しく口調の荒れた宗孝は、大岡が酌した酒を飲む。
「過ぎたことさ。もう、あの子は笑っていいのさ。今日は、それを願った席だしよ」
へいとその場の大人はそろえて頷いた。
「もう、過ぎたことさ。だから、もう忘れさせては、くれねぇかい?」
宗孝は誰にも聞こえない声で、小さくつぶやいた。答えるはずの声は、もうこの世界には居ないと知っていても、宗孝は尋ねずには居られなかった。