第20話 剣の攻略
文字数 1,657文字
「で、あんたはなんで隠れてんの?」
カズマが出て行ったのとは違う扉を、リューズは振り返る。
「やっぱ、さっきの注意ってオレのことか?」
――急に気配を消すなんて。
足で扉を開け、ロイスは両手を上げながら顔を出した。
「だってよ、オレまでいたら、イジめてるみたいになるじゃんか」
「イジメって……カズマのが年上よ?」
「こっちの人間は、長ければ百まで生きるんだぜ? 数字通りにはいかねーよ」
自分たちのが大人だ、とロイスは言い含める。
「こっちは、二十歳になるまでは子供って考えだからな」
「あぁ、なるほど」
カズマの優しさに合点がいったのか、リューズは小さく微笑んだ。
「私まで、子供に見られてたんだ」
「こっちの生活に慣れたオレからしても、テメーは子供だよ」
「そういうあんたは?」
キッとリューズは睨みつけるも、
「子供に決まってんだろ? それもクソガキだ」
ロイスはけらけらと笑っていた。
「じゃなきゃ、とっくに逃げてんよ。囲まれてんぜ?」
ロイスは『ルカ』として受け取った情報を垂れ流す。
「一万は超えてるらしい。つっても、ほとんどは包囲網の形成っぽいがな」
クル・ヌ・ギアは監視されている。この施設の存在意義に基づいて、諜報機器は至る所に散りばめられていた。
一応、偽装がバレている可能性を考慮して、ロイスはそちらでも確認していた。
「動くのは百人程度……フィロソフィアの奴らだ!」
待ってました、とロイスは舌なめずりをする。
「へー、百人程度でなんとかなるって思われてるんだ」
リューズもやる気満々の様子であるが、ロイスの考えは違った。
「そりゃ、剣の攻略法なんざ、歴史を省みれば明らかだかんな」
銃が効かないとはいえ、相手は剣を持った少女が一人。
「鎧を着る、車で突っ込む、数で押し切る……」
いくらでも対処法はある。
「まぁ、無難に防刃服にヘルメットは着てくるだろうよ」
リューズの攻撃は、剣の中でも斬撃に限られている。鎧越しにダメージを与えるには、刺突や打撃の類になるが、彼女の筋力ではどちらも難しい。
「別に問題ない。むしろ、それくらい想定内よ」
「えらく強気じゃねぇの? たぶんだが、聖域の範囲も知られてるぜ?」
「向こうから来てくれるのなら、歓迎だわ」
懸念だらけのロイスと違って、リューズは余裕の態度でいた。それが無知からくるものなのか、それとも自信に裏付けされたものなのかは、今の段階では判断できない。
「……いざとなりゃ、クソガキになんとかしてもらえばいいか」
最悪、アルルの力を借りればいいとロイスは確かめなかった。
「いや、アルルはいざって時の為に必要だから――」
しかし、リューズにまったく頼る気配が感じられないので撤回。
「おぃ、リューズ! 本気で言ってんのか? いくらなんでも、あのガキのリミットなしは、キツイぜ?」
リューズもロイスも、基本的に一殺が限界。それも今回に限っては鎧の隙間――首、手、足と攻撃箇所も限られるだろう。
反面、こちらは一撃でも受ければ致命傷。おそらく、敵は非致死性武器――スタンガンの類を持ち出してくる。
「私を誰だと思ってんの?」
いくら訴えても、強気の姿勢は揺るがなかった。
ロイスは自分の説明が悪いのかと、もう一度丁寧に教えるも効果なし。
「テメー、スタンガンって知ってんのか? 電気だぞ? 痺れるんだぞ? 銃タイプもあるから、中距離からも攻撃されんぞ?」
リューズはあっそ? と、言わん表情で興奮するロイスに目をやっていた。
「だぁー! わかった、もういい! 最悪、オレ一人で逃げるからな!」
説得を諦め――いや、キレたロイスは一方的にまくし立てて会話を打ち切る。
「タイムオーバーだ」
「みたいね」
窓を見やると、外では着々とフィロソフィアによる包囲網が展開されていた。
カズマが出て行ったのとは違う扉を、リューズは振り返る。
「やっぱ、さっきの注意ってオレのことか?」
――急に気配を消すなんて。
足で扉を開け、ロイスは両手を上げながら顔を出した。
「だってよ、オレまでいたら、イジめてるみたいになるじゃんか」
「イジメって……カズマのが年上よ?」
「こっちの人間は、長ければ百まで生きるんだぜ? 数字通りにはいかねーよ」
自分たちのが大人だ、とロイスは言い含める。
「こっちは、二十歳になるまでは子供って考えだからな」
「あぁ、なるほど」
カズマの優しさに合点がいったのか、リューズは小さく微笑んだ。
「私まで、子供に見られてたんだ」
「こっちの生活に慣れたオレからしても、テメーは子供だよ」
「そういうあんたは?」
キッとリューズは睨みつけるも、
「子供に決まってんだろ? それもクソガキだ」
ロイスはけらけらと笑っていた。
「じゃなきゃ、とっくに逃げてんよ。囲まれてんぜ?」
ロイスは『ルカ』として受け取った情報を垂れ流す。
「一万は超えてるらしい。つっても、ほとんどは包囲網の形成っぽいがな」
クル・ヌ・ギアは監視されている。この施設の存在意義に基づいて、諜報機器は至る所に散りばめられていた。
一応、偽装がバレている可能性を考慮して、ロイスはそちらでも確認していた。
「動くのは百人程度……フィロソフィアの奴らだ!」
待ってました、とロイスは舌なめずりをする。
「へー、百人程度でなんとかなるって思われてるんだ」
リューズもやる気満々の様子であるが、ロイスの考えは違った。
「そりゃ、剣の攻略法なんざ、歴史を省みれば明らかだかんな」
銃が効かないとはいえ、相手は剣を持った少女が一人。
「鎧を着る、車で突っ込む、数で押し切る……」
いくらでも対処法はある。
「まぁ、無難に防刃服にヘルメットは着てくるだろうよ」
リューズの攻撃は、剣の中でも斬撃に限られている。鎧越しにダメージを与えるには、刺突や打撃の類になるが、彼女の筋力ではどちらも難しい。
「別に問題ない。むしろ、それくらい想定内よ」
「えらく強気じゃねぇの? たぶんだが、聖域の範囲も知られてるぜ?」
「向こうから来てくれるのなら、歓迎だわ」
懸念だらけのロイスと違って、リューズは余裕の態度でいた。それが無知からくるものなのか、それとも自信に裏付けされたものなのかは、今の段階では判断できない。
「……いざとなりゃ、クソガキになんとかしてもらえばいいか」
最悪、アルルの力を借りればいいとロイスは確かめなかった。
「いや、アルルはいざって時の為に必要だから――」
しかし、リューズにまったく頼る気配が感じられないので撤回。
「おぃ、リューズ! 本気で言ってんのか? いくらなんでも、あのガキのリミットなしは、キツイぜ?」
リューズもロイスも、基本的に一殺が限界。それも今回に限っては鎧の隙間――首、手、足と攻撃箇所も限られるだろう。
反面、こちらは一撃でも受ければ致命傷。おそらく、敵は非致死性武器――スタンガンの類を持ち出してくる。
「私を誰だと思ってんの?」
いくら訴えても、強気の姿勢は揺るがなかった。
ロイスは自分の説明が悪いのかと、もう一度丁寧に教えるも効果なし。
「テメー、スタンガンって知ってんのか? 電気だぞ? 痺れるんだぞ? 銃タイプもあるから、中距離からも攻撃されんぞ?」
リューズはあっそ? と、言わん表情で興奮するロイスに目をやっていた。
「だぁー! わかった、もういい! 最悪、オレ一人で逃げるからな!」
説得を諦め――いや、キレたロイスは一方的にまくし立てて会話を打ち切る。
「タイムオーバーだ」
「みたいね」
窓を見やると、外では着々とフィロソフィアによる包囲網が展開されていた。