第37話

文字数 570文字

芽衣里は無意識に掌をギュッと握った。

「深く眠ったな、と思われるタイミングになったら、先生と私でこの部屋に来ます。眠っていることの確認ができましたら、お薬を点滴で入れます。その点滴が終わって死亡確認を先生がしたら、お身体はこの部屋を出て霊安室に移します。それと同時に病院の方からいただいたご連絡先へお電話します。そんな流れです。ご質問ないですか?」

芽衣里は首を横に振った。

「はい、では次に注意点になります。まずお薬ですが、私がこの部屋を出てから30分以内に飲んでください。30分経ったら我々がここに入室します。その時点でまだ起きていらっしゃる場合はキャンセルされたとみなします。また考え直した、ということであればベッドにナースコールのボタンがありますから、それを押してくださいね」

ベッドの枕元にコードのついたナースコールが置いてあるのを吉田看護師は指差した。

「いずれにしましても、本日の時点で診療を受けられない場合は、最初にお話した通り、今後二度と当外来の受診を受けられません。予約されましても、こちらでキャンセル致します。また本日、受診を中断されましても、返金はございません。その点はご了承ください」

芽衣里は首を小さく縦に振った。

「では、今が4時15分なので、45分までに薬飲んで眠ってください。お疲れ様でした」

吉田看護師は深く頭を下げた。


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登場人物紹介

大野芽衣里、37歳。

特技、趣味、欲なしで生きてきたフリーター。

坂月なるみ、37歳。

芽衣里の中学時代の友人。

長年不妊治療をし、やっと出産を果たす。

坂月望菜実、0歳。

なるみの娘。

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