第21話
文字数 576文字
芽衣里はちょくちょくコーヒーカップに口をつけながら、中尾の話に合わせて頷いた。
「もうっ、だから私、決めたの。あの人たちの墓には入らないって。コツコツ貯めた私のヘソクリで、ここを買って、一人の墓に入ってやるんだから。知り合いの弁護士に公正証書作らせて公的な効力も持たせるの。ざまあみろってもんよ」
あはは、と中尾は笑う。しかし、その目は暗かった。
「まあ、ごめんなさいね。お若いあなたにこんな話。失礼しました。でもあなたこそ、まだお若いのに、墓探ししてるなんて感心ね」
「はあ...」
まさかあなたより先に死ぬし、死亡予定日まで決まっているので、なんて言えやしない。
「ウチの息子なんかさ、あなたと同じぐらいだけど、先のことなんかなーんにも考えてないわね、あれは。嫁の実家にべったりでさ、ワガママな嫁の言いなり。孫にだって数えるほどしか会わせてくれやしない。ウチに寄り付く時といったらカネをせびる時のみよ。やんなっちゃうわよ。ムカつくから一銭も残してやんないつもり」
中尾は相当溜まっていたのだろう、と芽衣里は思った。着ている物や化粧の仕方から中尾の生活水準は高いことは窺える。だが、裕福とはいえ幸福であるとは限らない。
さらに言えば、世間の考える幸せの雛形に当てはまっていたとしても、当の本人が幸せだと感じているかどうかはまた別物だろう。中尾はその典型かもしれない。
「もうっ、だから私、決めたの。あの人たちの墓には入らないって。コツコツ貯めた私のヘソクリで、ここを買って、一人の墓に入ってやるんだから。知り合いの弁護士に公正証書作らせて公的な効力も持たせるの。ざまあみろってもんよ」
あはは、と中尾は笑う。しかし、その目は暗かった。
「まあ、ごめんなさいね。お若いあなたにこんな話。失礼しました。でもあなたこそ、まだお若いのに、墓探ししてるなんて感心ね」
「はあ...」
まさかあなたより先に死ぬし、死亡予定日まで決まっているので、なんて言えやしない。
「ウチの息子なんかさ、あなたと同じぐらいだけど、先のことなんかなーんにも考えてないわね、あれは。嫁の実家にべったりでさ、ワガママな嫁の言いなり。孫にだって数えるほどしか会わせてくれやしない。ウチに寄り付く時といったらカネをせびる時のみよ。やんなっちゃうわよ。ムカつくから一銭も残してやんないつもり」
中尾は相当溜まっていたのだろう、と芽衣里は思った。着ている物や化粧の仕方から中尾の生活水準は高いことは窺える。だが、裕福とはいえ幸福であるとは限らない。
さらに言えば、世間の考える幸せの雛形に当てはまっていたとしても、当の本人が幸せだと感じているかどうかはまた別物だろう。中尾はその典型かもしれない。