第24話

文字数 549文字

学生時代も社会人になってからもそれは変わらない。広く浅く、差し障りがない程度に、波風立てずに穏便に付き合う。それが芽衣里流の付き合い方なのだ。

「お仕事は変わらず、ですか?」

担当している美容師は明るく振り返った。小柄な身体を覆っている花柄のロングワンピースが揺れる。

「はい」

「クレーム対応でしたよね?」

詳細にはそうではない。芽衣里は発注受付要員として雇用されている。前にここでクレーム聞いたりすることもある、と少し話したのをこの美容師は覚えていたのだろう。

「まあ、そんなところです」

守秘義務があり、詳かな情報を部外者に話すことはできないため、芽衣里はぼかした。

芽衣里は大手カタログ通信販売会社のコールセンターに勤務している。メインでかかってくる電話は注文目的だが、返品・交換や返金といった対応も行う。中には、要望通りに応えられないケースもあり、その場合の一部の客はモンスターと化し、連日のように無理難題を並べ立てるための入電を繰り返す。

高校卒業とともにコールセンター業界に入った芽衣里は、複数の勤務先を経て現在の会社に流れついた。もはや電話対応についてはベテランであり、電話を取るだけでなく管理者として新人オペレーターの会話をモニタリングしたり、対応困難者についてのエスカレーション対応を行っている。
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登場人物紹介

大野芽衣里、37歳。

特技、趣味、欲なしで生きてきたフリーター。

坂月なるみ、37歳。

芽衣里の中学時代の友人。

長年不妊治療をし、やっと出産を果たす。

坂月望菜実、0歳。

なるみの娘。

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