第33話
文字数 852文字
今日も職場は相変わらず忙しい。
応答できないコール数が溜まり、後処理をしているスタッフを急かしたり、コールバック対応でこなすよう指示出しをしたり、といつもと何ら変わらず、戦場のような現場の最前線に立っていた。
でも芽衣里にとって今日は節目の日だ。最終出勤日なのだ。
といっても退職届けを出すわけではない。
明後日の朝、芽衣里の母から退職の意を伝えてもらうことになるのだ。
だが、それは内緒にしておきたい。だから至って変わらず、業務に臨んだ。
最後のお昼休憩も、いつもと同じようにたまたま休憩室で顔を合わせた同僚と屈託のない話をした。行ったことのないレストランに行ったり、少し豪華なお弁当でも買ってもいいかな、とも考えたが、結局は普段通りに自宅で作ったおにぎりを持参し、それをつまむだけに留めた。
芽衣里の勤めるコールセンターには何人かの名物入電者がおり、午後はその人の対応に捕まってしまったオペレーターの補助に明け暮れた。購入した商品が気に入らず、返金を要求しているのだが、商品の状態と購入した日付からして、希望には沿いかねる結果であったため、その旨を何度も伝えているのだが、引き下がらず、激昂して暴言を吐く入電を繰り返しているのだ。この日も警察に通報する、センターに乗り込んで土下座をさせる、等の罵詈雑言を浴びせてきた。コールセンターのルールとして、入電のあったコールに対してはオペレーターから切電をしてはならないため、気が済むまで話させる他、対処の仕様がない。芽衣里はモニタリングをしながら、オペレーターに耳打ちをしたり、紙に書いて指示を出したりした。1時間以上、通話が続いたため、その対応でその日の業務は終了となった。
このセンターでは私物を置くことは禁止されているため、片付けはない。退勤打刻を打って、帰宅の途に就ける。
執務室を出る際、芽衣里は数年間を過ごした部屋を見回した。デスクとヘッドセットとパソコンが並ぶ、見慣れた光景だ。
きっと明日も、明後日も、その先も、ここは変わらず稼動するのだろう。
私がいなくても。
応答できないコール数が溜まり、後処理をしているスタッフを急かしたり、コールバック対応でこなすよう指示出しをしたり、といつもと何ら変わらず、戦場のような現場の最前線に立っていた。
でも芽衣里にとって今日は節目の日だ。最終出勤日なのだ。
といっても退職届けを出すわけではない。
明後日の朝、芽衣里の母から退職の意を伝えてもらうことになるのだ。
だが、それは内緒にしておきたい。だから至って変わらず、業務に臨んだ。
最後のお昼休憩も、いつもと同じようにたまたま休憩室で顔を合わせた同僚と屈託のない話をした。行ったことのないレストランに行ったり、少し豪華なお弁当でも買ってもいいかな、とも考えたが、結局は普段通りに自宅で作ったおにぎりを持参し、それをつまむだけに留めた。
芽衣里の勤めるコールセンターには何人かの名物入電者がおり、午後はその人の対応に捕まってしまったオペレーターの補助に明け暮れた。購入した商品が気に入らず、返金を要求しているのだが、商品の状態と購入した日付からして、希望には沿いかねる結果であったため、その旨を何度も伝えているのだが、引き下がらず、激昂して暴言を吐く入電を繰り返しているのだ。この日も警察に通報する、センターに乗り込んで土下座をさせる、等の罵詈雑言を浴びせてきた。コールセンターのルールとして、入電のあったコールに対してはオペレーターから切電をしてはならないため、気が済むまで話させる他、対処の仕様がない。芽衣里はモニタリングをしながら、オペレーターに耳打ちをしたり、紙に書いて指示を出したりした。1時間以上、通話が続いたため、その対応でその日の業務は終了となった。
このセンターでは私物を置くことは禁止されているため、片付けはない。退勤打刻を打って、帰宅の途に就ける。
執務室を出る際、芽衣里は数年間を過ごした部屋を見回した。デスクとヘッドセットとパソコンが並ぶ、見慣れた光景だ。
きっと明日も、明後日も、その先も、ここは変わらず稼動するのだろう。
私がいなくても。