文字数 745文字

「持って来たぁ?」
部屋中央のソファーにふんぞり返るように座り、そういった女子の制服に、(れん)は何となく見覚えがあった。
同市内にある高校の一つだ。
武本(たけもと)烏山(からすやま)が気を利かせてくれたのかもしれない。中学校時代に仲が良く、進学してからも交流を持つことは全く珍しくない。
本当に今日はラッキーかもしれない。

武本(たけもと)はソファにふんぞり返る女子の前に茶封筒を放り投げるみたいに置いた。
ソファにふんぞり返る女子…、ちょっと長いので”ふんぞり子”と呼ぶことにしよう、ふんぞり子は口の端だけで笑いながらそれをとると中身を確認した。

「5万って言ってあったよね。」
「…それ以上は無理…。」
武本(たけもと)はふんぞり子を見据え毅然として答えた。
お金の貸し借りだろうか、もしそうなら(れん)の口出しできることではない。
「全然足りないじゃん、お前の学校中に言いふらすからな!」
梶原(かじわら)、あんたいい加減にしなよ!」
ここに入ってきてからずっと黙っていた烏山(からすやま)がふんぞり子に向かって強く出る。がふんぞり子の左右に座っていた七名の女子が怒声と共に一斉に立ち上がると烏山(からすやま)の勢いも
「…いや、…でも…5万なんて無茶だよ…」
と沈下してしまった。
そしてなおもふんぞり子は、いや梶原(かじわら)と呼ばれていたか…、まぁいい、ふんぞり子はたたみかける。
「なぁ、約束破ってんのはそっちだろ、だったらこっちも守ら…」
ふんぞり子はここで言葉を切った。いや言葉を詰まらせた。

「てかおい武本(たけもと)…誰だそいつ。」

ここへきてようやく、ふんぞり子は武本(たけもと)でも烏山(からすやま)でもない三人目がいたことに気が付いた。いや、さすがに気付いていたかもしれないが気にもとめなかったのだ。
ふんぞり子の仲間たちも一斉にその三人目に目を向ける。
自分に視線が集まっていることを察し、彼女は深々と頭を下げた。

「初めまして、江草(えぐさ)(れん)といいます。」
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