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笹塚(ささづか)ツカサは両手に持ったそれぞれのタンバリンの説明を始めた。
「多分これが一番一般的なタンバリンだねぇ。」
丸い木製の枠に皮を張り、小さなシンバルのような形の金具を取り付けたものである。
「このジャラジャラしたやつね、ジングルっていうの。」
小さな金属の金具はジングルというらしい。
「こうやって皮の部分を叩いたり、こうやって振ってジングルだけを鳴らしたり、あと擦って鳴らす奏法もあるんだよ。」
「わぁ!それ凄いですね!」
笹塚(ささづか)ツカサの説明を静かに聞いていた(れん)が驚きを溢した。
彼女がタンバリンの皮の淵寄り部分を擦ると、ジジジジジッとジングルの振動が持続した音が鳴った。
「ロールっていうテクニックだよ。あと、曲によっては手じゃなくてスティックやマレットで叩くこともあるの。」
「いろんな鳴らし方があるんですね。」

笹塚(ささづか) ツカサの説明はさらに続いた。

「こっちの二つはモンキータンバリン。いろんな形があるんだけど、こっちが丸型でこっちが半月型って言うの。主にこうやって振ってビートを刻むの。」

丸型のモンキータンバリンは、最初に見せてもらったタンバリンの皮を張っていないタイプらしい。円形の丸型と、それを半分にしたような半月型で笹塚(ささづか)ツカサは幾つかのデモンストレーションを見せてくれた。
「半月型のほうが手首にかかる遠心力が軽いの。」
大雑把にただ振っているようでも細かい手首の返しなどが加わることでアクセントが加わり、いきいきとして聞こえる。
「いろんなリズムが出来てすごいです!」
カラオケでは感覚的にやってしまったが、笹塚(ささづか) ツカサに説明を受けながら見るととても分かり易かった。
「私が使ったのはこういうやつの黄色いのです。」
(れん)は半月型のモンキータンバリンを指した。
「カラオケで、って言ったからそうだと思った。」
パーティー用に一番普及しているのはこのタイプのタンバリンだろう。

そして笹塚(ささづか)ツカサが最後の一つを手に取る。
「でね、これがパンデイロ。厳密にはタンバリンじゃないの。」
「これ、タンバリンじゃないんですか?」
どう見てもタンバリンだった。形状は最初にみせてもらった一般的なタンバリンと同じである。円形の枠に皮が張られ、枠を飾るようにジングルが付けられている。いや、良くみると違うかもしれない。タンバリンのジングルは二列、湾曲した部分が外を向いて、背中合わせのようにつけられている。でもパンデイロは内側を向いていて一列しかない、そしてジングル自体少し大きいかもしれない。
いや、もっとよく見ると全然違う。
「これ、タンバリンにはない部品がありますね。」
「そう。皮の張力を調節するためのものだよ。はい。」
と言って笹塚(ささづか) ツカサはパンデイロを(れん)に手渡した。
「なんか叩いてみて!」
「ほへ?急に言われても…。」
「カラオケのときは出来たんでしょ?思いつくままでいいからさ!」
笹塚(ささづか) ツカサの興味津々の眼差しが(れん)の手元に注がれた。


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