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文字数 1,213文字

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目を閉じてから数十秒経った。どうしたんだろう…直前になって急にひよったのだろうか…だけど無理もない、とサッちゃんは思う。正直(まさなお)だってごくごく普通の高校一年生、女子とのこんなシチュエーションに慣れているはずもない。…というかサッちゃんも全く経験がない、駄目だ!息を止めているのが辛くなってきた!!
「ぶはっ!」
「大丈夫ですか?九条(くじょう)さん。目、開けないでください!」
「…わ、わかった!大丈夫…。あの、まだかな」
わ!催促してるみたいなことを言ってしまった…。正直(まさなお)だって心の準備とかいろいろ大変なのに…もっと、年上女子の余裕を!包容力を叩きつけねば!!
「まだです。」
だよね!いいよ!ゆっくりでいいよ!
トランペットの遠鳴り(ファンファーレ)が響く。
吹奏楽部の演奏が始まったようだ。
――…鈴?かな…ああ、多分あれだ、ほら…そう、タンバリン!
その直後、閉じた瞼を擦るように、何かが幾つも横切った…気がする。
何だろう、光るピンポン玉みたいなもの…。
だからつい、サッちゃん薄目を開けてしまった…。
その時ようやくサッちゃん悟った。
――これ、チュウじゃない…。
正直(まさなお)も顔を手で覆うようにして必死に両目を閉じていたのだ。
九条(くじょう)さん、絶対目を開けないでくださいね!!

だが…、

遅かった…

サッちゃん、 ソレ (・・)を見てしまった。

「光を見ないでください!」
正直(まさなお)自身も痛みを堪えるみたい必死の叫びをサッちゃんに向ける。
――分かってる、分かってるの、だけど…
再び目を閉じようとしても、手で目を隠そうとしても、何故かそれが…出来ない…。
むしろ、ずっとこの光を見ていたい…。体の内側が熱くなって、むずむずと喜びが巨大化して爆発しそうな予感に震えそうなの…
――正直(まさなお)も見ちゃいなよ!何かすごく気持ちいいよ。

「クソ!!!九条(くじょう)さん!!あなたを獲らせる訳にはいかない!」
その声を聞き終わるか終わらないかで、サッちゃんの意識は眩い光の深淵に堕ちて行った。

*

マァ君、九条(くじょう)さんがクロックライトの制御下に落ちタンバラーになりかけてしまってるのを察知した。
校庭では歓喜の叫声が多く上がっている。ひとたまりもないだろう。一人残らずタンバラーに取り込まれているはずだ…金管のファンファーレで注目を集めて江草(えぐさ)先輩のタンバリンで確実にあの場にいる全員を仕留めたのだろう。

だからこそ!

絶対に!

絶対に!!

「クソ!!!九条(くじょう)さん!!あなたを獲らせる訳にはいかない!」

マァ君は自分の顔を覆っていた両手で九条(くじょう)さんの目を隠した。これで九条(くじょう)さんはクロックライトを直接見ずにすむ。
しかーし!しこの状態ではマァ君がクロックライトにやられてしまう!だってクロックライトは瞼を透過してくるほど眩しい。目を閉じた上で手のひらで覆うくらいじゃないとダメだ。
マァ君の両手は九条(くじょう)さんの目を隠している。じゃぁマァ君の目はどうやって…!

この方法しかない!

この方法しかないんだ!

マァ君は九条(くじょう)さんの胸に顔をうずめた!





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