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文字数 1,001文字

飛田(とびた)先生?!
マァ君の肩を叩いたのは保健室の飛田(とびた)先生だった。
?!な、何で飛田(とびた)先生がここに?
あ、そっか、第二音楽室の周囲は特に他の校舎や設備のないただの校内敷地だけど、砂利を敷いて職員の駐車場になっている区画があって、何ならマァ君そこからも丸見えだった。
「帰ろうとしたら古沢(ふるさわ)君を見掛けてね、なんか様子が様子だけに心配になってさ。」
マァ君の様子のどのあたりが心配だったのか全く心当たりがないが、ここはきちんと理由を説明し弁明しておくべきだろう。
「いや、それは安心してください飛田(とびた)先生、吹奏楽部の部室を覗いていただけなんです。」
「やっぱ覗いてたんだ…覗いているように見えて実は先生が感心するような何かをしてるのかも、と淡い期待を抱いたけどやっぱ見たまんま覗いてたんだね。それまさか女子の着替えとかじゃないでしょうね?!」
飛田(とびた)先生がマァ君に詰め寄った。
「そんなまさか!安心してくださいよ、吹奏楽部は運動部じゃないから着替えとかありませんよ、あったら俺が見逃すはずないでしょ?」
マァ君胸を張った。
「…それもそうね。」
と先生は複雑な音色の溜息をついた。
この飛田(とびた)先生は数少ないマァ君の理解者である。マァ君の言動は常に欲望に忠実であり、マァ君自身でもその管理が難しい、という性質(へき)を知っている。
「で?何を見てたの?」
「これです先生。」
マァ君は飛田(とびた)先生に双眼鏡を手渡し、先生はそれを部室に向けて覗いた。
「みんな文化祭に向けて頑張ってるわね。」
飛田(とびた)先生はこの光景を、ダンスの猛練習か何かだと思ったのだろうか。
「そうじゃないんです飛田(とびた)先生、あれはですね、」
マァ君は何故部室があんなこと、つまり総部員数以上の生徒が演奏に合わせ嬉々として踊り狂っているかを、マァ君の仮説を交えて説明した。

*

「成程ね…。つまり古沢(ふるさわ)君は、江草(えぐさ)さんの叩くタンバリンが引き起こす現象の異常性についていろいろ調べてるのね?」
「そうです!そういう設定(てい)江草(えぐさ)先輩とその周辺を嗅ぎまわっているんですクンクンなんです!」
「むしろそっちが目的?」
「もちろん両方ですよ!このオカルト現象にも断然興味あるんですよ!」
「ふぅ~ん。」
飛田(とびた)先生は何かを考え込む素振りをしたが、すぐに思考をまとめ上げたようだった。
古沢(ふるさわ)君、家まで送ってあげる、乗って。」
飛田(とびた)先生は車のキー取り出すと背後でオレンジ色のハスラーがヘッドライトを光らせた。
「私も首、突っ込みたくなっちゃった。」
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