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文字数 1,486文字
――空だ…。
指の隙間から青空が見える。サッちゃんいつの間にか地面に仰向けに寝転んでいた。
――ん?
何か胸がモゾモゾする。
「…ッ?!正直 ?」
胸の真ん中に彼の顔が埋 まり、サッちゃんガッチリそれをホールドしていた…先程の隙間に空を見た指はどうやら正直 のものだったようだ。てか声に出して彼を呼び捨てで呼んでしまった。いくら年上でもやっぱ許可はとった方が良いよね。「正直 って呼んでいい?」って。
――じゃないよ!
何これ!呼び方とかどうでもよく思えるほどの状況なんですけど?
「むももも!!ぶひょーはん!ぶひょーはん!」
正直 がジタバタとしている。
――あ、そっか…
サッちゃんは彼の頭を胸の前でロックしている腕を解いた。危うく窒息させるところだった。
「ぶはっ!九条 さん!無事ですか?」
気遣ってくれるのは嬉しいが、さすがにこれは看過できない、ちゃんと言うべき!限度ってものがあるよ!
「ねぇ正直 、場所考えてよ!」
直感的に何だか変なことを言ったような気もしなくない。
「九条 さん、手足自由に動きます?」
んもう~完全にスルーしたよ。
「え?うん。」
サッちゃんは正直 に上半身を起こしてもらう。
「頭、痛くないですか?」
言われてみれば少しだけど鈍い頭痛がある。
「眩暈 とかありませんか?」
言われてみれば少しだけくらくらする気もする。
「ちょっと頭痛いし、ちょっとふらつくかも…。」
サッちゃんは現在の体調を正直 に伝えた。
「体の感覚が完全に戻るまで時間がかかるかもしれません。」
一体どうしてしまったんだろう…。そうだ思い出した。正直 がサッちゃんにキスしようとしたときに凄い眩しいピンポン玉くらいの光が幾つも横切って、それを見てたら気持ち良くなって気を失ったんだ。
――あの光は…
「クロックライトの影響です。」
サッちゃんの表情から抱いている疑問を読み取ったのか、正直 は初めて聞く言葉を口にした。
「何?」
「クロックライト。さっきのあの光です。」
正直 はその光の概要を大まかに説明してくれた。
見た者を踊らせ歌わせ操ること
操られている間は強い多幸感や万能感があること
強烈な中毒性があること
操られた状態から解放された時に、極度の消耗感や疲労感、脱水症状の危険性、その他健康を損なう恐れがあること
そしてその光はタンバリンが発生源であること
「何なのよそのヤバいタンバリンは!」
にわかには信じられない。
が、正直 がそう言うならそれだけでどんなに馬鹿げてたってサッちゃんには真実だ!
「そのタンバリンが放つクロックライトで既に全校生徒と教員、来場者すべてが暴徒化しました。」
そう、先程から吹奏楽部の演奏が聞こえてきている。うねる打楽器のリズムと高らかなブラスセクション。それらを飲み込む程の歓声と嬌声と怒号…。
「九条 さん、そろそろ歩けますか?」
サッちゃんもふらつくけど正直 だって同じはずだ。支え合うようにして二人で歩いた。それでもだいぶ回復している。
そしてそこから校庭を見下ろした…
――?!?!ナニ…これ…
「復讐のパレードです。」
正直 が低く呟いた。
人の渦だ…。一体どれくらいいるのだろう…
「これに、ある要人の命が狙われています。」
そうだ!その人を助けるためにパレードを止めて欲しい、と正直 がサッちゃんに頼んでいるんじゃないか!
「パレードを止めるにはタンバリンの演奏を止めるしかありません。」
「奏者は」
なるほど!そのヤバいのさえ止めれば全部止まるのか…で、どこで叩いてるんだろうか…サッちゃんは校庭を見回す。が返答は正直 の指先がもたらした。
彼の示す先を見て凍った。
かすれた声にさえならない悲鳴のような呟きがサッちゃんの口から零れた。
「…江草 連 …。」
指の隙間から青空が見える。サッちゃんいつの間にか地面に仰向けに寝転んでいた。
――ん?
何か胸がモゾモゾする。
「…ッ?!
胸の真ん中に彼の顔が
――じゃないよ!
何これ!呼び方とかどうでもよく思えるほどの状況なんですけど?
「むももも!!ぶひょーはん!ぶひょーはん!」
――あ、そっか…
サッちゃんは彼の頭を胸の前でロックしている腕を解いた。危うく窒息させるところだった。
「ぶはっ!
気遣ってくれるのは嬉しいが、さすがにこれは看過できない、ちゃんと言うべき!限度ってものがあるよ!
「ねぇ
直感的に何だか変なことを言ったような気もしなくない。
「
んもう~完全にスルーしたよ。
「え?うん。」
サッちゃんは
「頭、痛くないですか?」
言われてみれば少しだけど鈍い頭痛がある。
「
言われてみれば少しだけくらくらする気もする。
「ちょっと頭痛いし、ちょっとふらつくかも…。」
サッちゃんは現在の体調を
「体の感覚が完全に戻るまで時間がかかるかもしれません。」
一体どうしてしまったんだろう…。そうだ思い出した。
――あの光は…
「クロックライトの影響です。」
サッちゃんの表情から抱いている疑問を読み取ったのか、
「何?」
「クロックライト。さっきのあの光です。」
見た者を踊らせ歌わせ操ること
操られている間は強い多幸感や万能感があること
強烈な中毒性があること
操られた状態から解放された時に、極度の消耗感や疲労感、脱水症状の危険性、その他健康を損なう恐れがあること
そしてその光はタンバリンが発生源であること
「何なのよそのヤバいタンバリンは!」
にわかには信じられない。
が、
「そのタンバリンが放つクロックライトで既に全校生徒と教員、来場者すべてが暴徒化しました。」
そう、先程から吹奏楽部の演奏が聞こえてきている。うねる打楽器のリズムと高らかなブラスセクション。それらを飲み込む程の歓声と嬌声と怒号…。
「
サッちゃんもふらつくけど
そしてそこから校庭を見下ろした…
――?!?!ナニ…これ…
「復讐のパレードです。」
人の渦だ…。一体どれくらいいるのだろう…
「これに、ある要人の命が狙われています。」
そうだ!その人を助けるためにパレードを止めて欲しい、と
「パレードを止めるにはタンバリンの演奏を止めるしかありません。」
「奏者は」
なるほど!そのヤバいのさえ止めれば全部止まるのか…で、どこで叩いてるんだろうか…サッちゃんは校庭を見回す。が返答は
彼の示す先を見て凍った。
かすれた声にさえならない悲鳴のような呟きがサッちゃんの口から零れた。
「…