第18話 山田剛士の思い
文字数 1,197文字
剛士は、華純には内緒で、華蓮の(子供の頃に)DNA検査を行った。
「予想通り」、自分の子と確認した。
そして、実はその時に、息子保の次に、聖トマス学園を引き継がせることを決めた。
直系で言えば、息子の保が筆頭で、次が保の長女由紀子になる。
保の次期学園長は仕方なかった。
しかし、その次世代の華蓮は、音楽の力、勉強の力、そして美貌と愛らしさは、はるかに由紀子の上だった。
保にも、その旨を伝えた。
「由紀子には、良縁を準備する」
「財務省の有力若手か、大財閥の御曹司」
「外から聖トマス学園を護らせる」
「お前の次は、華蓮に継がせる」
保は、血相を変えて抵抗した。
「華蓮の父親が、実は、あなただから?」
「戸籍上の父を殺して誤魔化したのも、あなた」
「母親だって、ただの優秀なピアニストに過ぎない」
「その母親の結婚を知って、犯したのもあなたでしょ?」
「由紀子の良縁はともかく、華蓮だけは、認められません」
「私が許しても、世間が許さない」
「もし、真実が漏れたら、世間の評判がどうなるのか」
「それこそ、我が一族の評判に泥を塗ることになる!」
しかし、剛士は、一度決めたら他人の意見は(実の息子なら、なおさら)聞く耳は持たないタイプの人間だった。
「お前に言われる筋はない!」
「お前は、ピアノの才もなく、学問も凡庸」
「ただ山田家の長男だから良縁を用意され、次期学園長になる、それだけのことだ」
「もし、山田家の長男でなければ、ロクな仕事にもつけず、結婚すらおぼつかない、そんな程度の男でしかない」
「何の取り柄もないのに、この私に立てつくなど、許しがたい!」
「事実」を言われ、長男保は、何も反抗が出来ない。
「わかりました、善処します」以外、何も言えなかった。
剛士がそんなことを思い出しながらスコッチを飲んでいると、老執事大塚が部屋に入って来た。
「由紀子様からお聞きしました」
「華蓮様は、本日、神保町に行かれたそうです」
「夕食も神保町でとのことです」
剛士は、首を傾げた。
「何故、神保町か?」
「本が好きなのか?」
「確かに勉強は好きのようだが」
「神保町に美味い物があるのか?」
「本屋の街で庶民の街だ」
ただ、それほどの不安は感じない。
むしろ、面白さも、感じた。
「ようやく、夜歩きか」
「神保町がイマイチ地味だが」
「由紀子と香苗の、おもちゃから脱する機会かもしれん」
「できれば、彼女の一人や二人作れないとなあ」
「保は四角四面で不器用で、全くモテなかった」
「いずれにせよ、少し様子を見ることにしよう」
老執事大塚を、「報告のみ」で、部屋から去らせた後、剛士は部屋の窓を開けた。
「素晴らしい月だ、風もいい」
「今の日本人は、そんな風情も忘れているが」
華蓮の観月音楽会の風情に満ちた演奏を思い出した。
「必ずコンクールに出す、優勝させる」
「その勢いで、コンサートを開く」
「宮内庁も呼ぶか」
「俺以来の、御前演奏もさせて見よう」
剛士は、満面の笑みを浮かべていた。
「予想通り」、自分の子と確認した。
そして、実はその時に、息子保の次に、聖トマス学園を引き継がせることを決めた。
直系で言えば、息子の保が筆頭で、次が保の長女由紀子になる。
保の次期学園長は仕方なかった。
しかし、その次世代の華蓮は、音楽の力、勉強の力、そして美貌と愛らしさは、はるかに由紀子の上だった。
保にも、その旨を伝えた。
「由紀子には、良縁を準備する」
「財務省の有力若手か、大財閥の御曹司」
「外から聖トマス学園を護らせる」
「お前の次は、華蓮に継がせる」
保は、血相を変えて抵抗した。
「華蓮の父親が、実は、あなただから?」
「戸籍上の父を殺して誤魔化したのも、あなた」
「母親だって、ただの優秀なピアニストに過ぎない」
「その母親の結婚を知って、犯したのもあなたでしょ?」
「由紀子の良縁はともかく、華蓮だけは、認められません」
「私が許しても、世間が許さない」
「もし、真実が漏れたら、世間の評判がどうなるのか」
「それこそ、我が一族の評判に泥を塗ることになる!」
しかし、剛士は、一度決めたら他人の意見は(実の息子なら、なおさら)聞く耳は持たないタイプの人間だった。
「お前に言われる筋はない!」
「お前は、ピアノの才もなく、学問も凡庸」
「ただ山田家の長男だから良縁を用意され、次期学園長になる、それだけのことだ」
「もし、山田家の長男でなければ、ロクな仕事にもつけず、結婚すらおぼつかない、そんな程度の男でしかない」
「何の取り柄もないのに、この私に立てつくなど、許しがたい!」
「事実」を言われ、長男保は、何も反抗が出来ない。
「わかりました、善処します」以外、何も言えなかった。
剛士がそんなことを思い出しながらスコッチを飲んでいると、老執事大塚が部屋に入って来た。
「由紀子様からお聞きしました」
「華蓮様は、本日、神保町に行かれたそうです」
「夕食も神保町でとのことです」
剛士は、首を傾げた。
「何故、神保町か?」
「本が好きなのか?」
「確かに勉強は好きのようだが」
「神保町に美味い物があるのか?」
「本屋の街で庶民の街だ」
ただ、それほどの不安は感じない。
むしろ、面白さも、感じた。
「ようやく、夜歩きか」
「神保町がイマイチ地味だが」
「由紀子と香苗の、おもちゃから脱する機会かもしれん」
「できれば、彼女の一人や二人作れないとなあ」
「保は四角四面で不器用で、全くモテなかった」
「いずれにせよ、少し様子を見ることにしよう」
老執事大塚を、「報告のみ」で、部屋から去らせた後、剛士は部屋の窓を開けた。
「素晴らしい月だ、風もいい」
「今の日本人は、そんな風情も忘れているが」
華蓮の観月音楽会の風情に満ちた演奏を思い出した。
「必ずコンクールに出す、優勝させる」
「その勢いで、コンサートを開く」
「宮内庁も呼ぶか」
「俺以来の、御前演奏もさせて見よう」
剛士は、満面の笑みを浮かべていた。