第6話 学園長屋敷の二階

文字数 1,010文字

食事を終えた由紀子、香苗、華蓮は、二階にのぼった。
真紅でフカフカの絨毯が広い廊下に敷かれている。
壁には、印象派の絵画(ターナーが多い)が規則的に、品よく掛けられている。

いろんな部屋がある。
階段を挟んで右側には、10人程度入る談話室、ミニキッチン、図書室、突き当りの広い部屋(100人は入る)は音楽室。(ステージの上には、スタインウェイのピアノ、ドラムセット、譜面台が並んでいる)
その他にも、工作室(兼美術室)もあるようだ。

左側には、孫娘由紀子、外孫の香苗、そして華蓮の部屋が並んでいる。
(由紀子の部屋が一番広い)

華蓮が自分の部屋に入ろうとした時、由紀子が華蓮の腕をつかんだ。
「話があるの、おチビさん」
(その言葉に、明らかにトゲがある)

華蓮は抵抗した。
「もう、夜は遅い、明日にして欲しい」

由紀子は認めない。
「私に逆らうの?ぶつわよ」
(本当に手をあげ、叩こうとする)

(香苗は、オロオロと見るばかり)

華蓮は、由紀子と目を合わせない。
「かまわない、お好きにぶてばいい」
「そうしたら、この屋敷を出て行く」
「学園も辞める」

(香苗はポロポロと泣き出した)

由紀子は、それでも、華蓮の腕を強く掴んで離さない。
「うるさいわね!」
「私の部屋に来なさい!」
(実際に連れ込もうとする)

香苗が、ようやく動いた。
「由紀子ちゃん、やめて!」
(華蓮を後ろから抱きしめ、由紀子から引き離した)
(香苗は、目つきも強く変わっている)

「由紀子ちゃん、勝手なことしないで!」
「私の華蓮ちゃんでもあるの!」
「私も一緒に聴くから、独り占めしないでよ!」

華蓮は、香苗の腕を振りほどき、首を横に振った。
「だから嫌だ、この屋敷に入ってから、そんなことばかり」
「もう嫌だ、この屋敷なんて出て行く」
「二度と、顏を見せない」
「僕も、望んで、この屋敷に来たわけではないから」

最後の言葉が、由紀子の心に響いたようだ。
由紀子は、その顏を蒼くした。
「そんなこと・・・言うの?」
「噓でしょ?華蓮?」
「ただ・・・少し・・・二人だけでお話したかっただけ」
「嫌いじゃないよ、好きよ」
「好きだから・・・誰にも渡したくないの」
「それなのに、ピアノは上手過ぎて・・・悔しいけど、かなわない」
「他の女に、華蓮の笑顔を、見せたくなかったの・・・」
「だから・・・つい・・・気持ちが高ぶって」
「出て行くなんて、言わないでよ」
(由紀子は、支離滅裂、ボロボロと泣き出した)

香苗は、再び華蓮を後ろから抱きしめている。
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