第34話 香苗の謀略

文字数 979文字

老執事大塚は、由紀子の部屋を出た直後に、香苗の部屋に連れ込まれた。
香苗は、詰問した。
「由紀子に何を言われたの?」

老執事大塚は、首を横に振った。
「お答えできません」

香苗は、その返事を許さなかった。(実は壁に耳をあて、聞き取っていた)
「華蓮のことでしょ?」

老執事大塚は、再び首を横に振った。
「お答えできません」

香苗も強情である。
「由紀子の言うことを聞いて、私には答えないの?」
「たかが、執事でしょ?」

老執事大塚は、苦悩の色を浮かべた。
「申し訳ありません、由紀子様の厳命です」

香苗は、さらに追及した。
「要するに、由紀子は華蓮を抱きたい、その段取りをつけろ、でしょ?」(盗み聞きしたことを、そのまま言った)
老執事は、静かに頭を下げ、香苗の部屋を去って行った。

一人になり、香苗は考えた。
「そもそも、華蓮が横浜にいることは、わかっている」
「ここに来ないなら、私が行けばいい」
「由紀子より先に屋敷を出て、先に華蓮を抱く」
「由紀子なんかに負けない」
「あんな不倫親父の娘に、負ける理由がない」

香苗は、華蓮に会えば、関係は「もとに戻る」と、考えている。
「確かに、あの時は、由紀子と強姦みたいだった」
「二人がかりで無理やり、裸にして、奪ってしまった」
「華蓮が怒るのも、当たり前だ」
「それは、ごめんなさい、しよう」
「でも、華蓮は、頭がよくて、やさしい男の子だ」
「きっと、許してくれるはずよ」

香苗は、裸になって、鏡で身体を見た。
「華蓮は、由紀子の貧乳なんて興味ないよね」
「私に抱かれなさい」
「それが、華蓮と私の幸せなの」
「近親相姦?何も気にしないよ」

いつまでも、自分の裸を見ていても仕方ないと思った。
香苗は、ネグリジェを着て、計画を立て始めた。

「朝早く、この屋敷を出る」
「朝食も、食べない」
「そのままタクシーで横浜に直行」
「森本家だったな、華蓮が住んでいるのは」
「まず、そこで、出て来るのを待つ」
「出てきたら、有無を言わせず、タクシーに押し込む」
「タクシーの中で、キス責めにする」
「そのまま、ホテルに連れ込んで、抱く」
「その後は・・・無理やり連れ帰る」

香苗は、「誘拐や暴行」の「悪徳観」は持たなかった。
「私は、華蓮が好きで、抱きたい」
「華蓮も、本音では、私が好きなはず」
「だから、何も悪くない」
「好きなもの同士が、愛を確かめ合うだけ」

華蓮の「拒絶や、嫌がる顏」は、全く予想していない。
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