第15話   香苗の思い①

文字数 1,334文字

香苗は、中学入学と同時に、「祖父」山田剛士に呼ばれ、山田屋敷に住み始めた。
一つ上の(本家)の由紀子とは、基本的には、仲がいい。
子供の時から、ルックスとピアノでは、由紀子に負けたことはなかった。
由紀子が、自分に勝るのは、「祖父からの直系、学園長家であること」と思っていた。
唯一、別次元と感じたのは、「時々遊びに来る」華蓮だけだった。
華蓮は、顏も可愛いし、ピアノは自分がたどり着けないほどに、上手かった。
技術も高く、音楽そのものに、「気高い歌心」が満ちていた。

香苗は、小学生の頃から、各コンクールで、一位を独占し続けて来た。
もともと、モデルのような愛らしい顔なので、学園内ではもちろん、世間一般でも、超人気者になった。(音楽家としては珍しいトップアイドルになった)

華蓮が、コンクールに出ない理由は、わからなかった。
直接、華蓮に聞いた。
「ねえ、一緒に出ようよ」
「私、華蓮の演奏好きなの」
「私より、上手なのに、何で出ないの?」

華蓮は、それを聞くたびに、難しい顏をした。
「僕も出たくないし、母さんも反対している」
「とても人様に聴いてもらえるような腕ではない」

香苗は、華蓮の母、華純の演奏も好きだった。
だから、何枚もCDを持っている。
(バッハ、モーツアルト、シューベルト、ベートーヴェン、ショパン、何を聴いても、聴き惚れる)
(華蓮の演奏も、母子なので、よく似ている)

華蓮は、小学生の後半から、山田屋敷に姿を見せなくなった。
(森本華純は、もともと祖父剛士のピアノの教え子と、両親から聞いた)
(それまでは親族の集いにも、華純と一緒に来ていたが、途中から二人とも、来なくなった)
(理由は、祖父も両親も、知らないと言った)

華蓮の母、華純が亡くなったと聞いた時は、泣いた。
「もっと教わりたかったのに」
「華蓮君、大丈夫?」

その華蓮が、祖父剛士に連れられて「今夜から山田屋敷に住む」と入って来た時は、本当にうれしかった。
華蓮に、むしゃぶりついて、泣いた。
(由紀子のムッとした顔は、無視した)

最初の夜から、一緒に(無理やり)お風呂に入った。
少し恥ずかしかったけれど、それ以上に、華蓮の身体を見たかった。
由紀子より胸が成長していたので、見せつけたかった。

裸の華蓮は、きれいだった。
肌が白くて、胸もお尻も脚も見とれた。
(華蓮は、前を隠していた、それも面白かった)

夜も(毎日ではないけれど)、華蓮の部屋に忍んで、一緒に寝た。
(由紀子と一緒の時も多かった)
華蓮は、最初は抵抗したけれど、撫でていたら無抵抗になった。
「諦めたの?」と聴いたら、小さな声で「うん」と返事。
ますます可愛くなって、ずっと撫で続けたら、華蓮はコトンと眠ってしまった。
(由紀子の時は、抵抗を続けるらしい)
(それも、香苗の由紀子に対してのマウント感の一つである)

「いつかは・・・しちゃうのかな」と思っている。
でも、華蓮との「はじめて」なら、何もためらいを感じない。
むしろ、「そうなりたい」と思っている。
「あの可愛い華蓮と一つの身体」
「すごくドキドキして泣いちゃうかも」
「でも、由紀子には、渡したくない」

「血のつながり」は、祖父剛士から、聞いた。
ただ、くわしいことは、祖父からも、両親からも聞いていない。
「遠い親戚」ぐらいの気持ちでいる。
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