第39話 華蓮の死は、伏せられた。

文字数 691文字

華蓮の死は、山田剛士が、警察とマスコミ各紙に大金を配り、伏せられた。
「死因」は「事故死」とだけだった。
直接の原因となった由紀子と香苗には、一切「お咎め」がなかった。
(現場の事情聴取も行われなかった)

華蓮の遺体は、そのまま横浜の森本家に引き渡された。
医師でもある叔母華代子は、山田剛士と警察に猛抗議した。
「勝手に連れ去って、その結果、事故死?」
「拉致連行して、傷害致死では?」
「警察も、それを認めるのですか?」

山田剛士は、懸命に叔母華代子を説得した。
「事実は、私も不明だ」
「ただ、誰も悪気があって、華蓮を殺すわけがない」
「いまさら生き返るわけでもない、こらえてくれ」

警察は、抗議を一切聞かなかった。
「拉致連行の事実などは、ありません」
「傷害致死を主張されるのなら、その証拠を示してください」

華蓮の葬儀は、横浜の森本家とK大付属高で行った。
華蓮の通うK大学付属高は、華蓮の死を悼み、多くの学生と教師が参列した。
(聖トマス学園からは、誰も出なかった)

弔辞は二人、クラス委員長吉沢美紀と佐々木校長(母華純の後輩)が行った。
クラス委員長吉沢美紀は号泣した。
「華蓮君、寂しいよ、笑ってよ、寂しい」
「せっかくお友だちになったのに、みんな華蓮君の声も笑顔も大好きなの」
「本当に・・・もう、この世の人ではないの?」

佐々木校長も泣いた。
「お母さまの華純さんは、私の憧れで、ピアノの名演奏家」
「華蓮君も、実はその才能を受け継いでいて、いつかは聴きたいなあと」
「でも・・・こんなことになって・・・」
「残念でなりません」
「せめて・・・天国でお母様と、お幸せに」

華蓮の遺骨は、母と同じ、森本家の墓に納められた。
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