第22話 華蓮の救出

文字数 1,016文字

「気分は、どうかな?華蓮君」
華蓮の耳に、懐かしい声が聞こえた。
誰かは、すぐにわかった。
どこの病院であるかも、すぐにわかった。
母華純の姪、従姉の森本美代子(23歳)の声。(今は医師になっている)
病院は、母華純の姉、華代子が院長である。(横浜にある)

「どうして、横浜に?」
(自分は、鎌倉で気を失った記憶しかない)

美代子は、やさしく華蓮の髪を撫でた。
「見つけてくれた警察官が、華蓮君の財布を見て」
「その中に、昔通った診察券が残っていたの」
「それで、連絡が来て、従姉ですって言って」
「私が、ここまで運んだの」

華蓮の目に涙があふれた。
「ごめんなさい、美代子さん」
「僕なんかのために」

美代子は、華蓮の手を握った。
「何か、すごく辛いことが、あったの?」
「ずっと、うなされていたよ」
「我慢強い華蓮君が、まさかの場所で倒れていたし」

華蓮は、目を閉じた。
「うん・・・でも、言えない」
(まさか、山田屋敷で、二人の従姉と・・・言えるわけがない)

美代子は、華蓮を抱き起した。
そのまま、ふっくらとした胸で包み込んだ。
そして、笑った。
「懐かしいな、これするの、大好き」
「子供の頃は、泣き虫だったよね」

美代子は、やさしい声で続けた。
「要するに、山田屋敷で、苛められたの?」
「それで、我慢の限界を超えて、飛び出したの?」

華蓮は、美代子の胸の中で、顏を縦に動かした。(うん、の意思表示である)

美代子は、また聞いて来た。
「学園長?」(華蓮は、首を横に動かした、違うの意思表示)
「それとも、保さん?」(ここでも、華蓮は、首を横に動かした)

美代子は、一旦、華蓮を自分の胸から解放した。
(華蓮は、赤い顔になっていた)
「もしかして、由紀子と香苗に、家を出るほどの何かを?」
(美代子は、厳しい顔だった)
(華蓮は、顏が真っ赤、下に向けた)

美代子は、華蓮を再び抱きかかえた。
「何となくわかった」
「山田屋敷からも電話が来たよ」
「由紀子と香苗の声が、すごく焦っていたから」
「原因は、あいつらか」
「性的暴行は、男からだけではないの」
「報道されないだけで、女からも多いの」

華蓮は、顏を上げた。
「もう、帰りたくない」
「二度と、あの二人の顏を見たくない」

美代子は頷いた。
「何とかする、ここにいなさい」
「母さんも、もう少ししたら来る」
「退院したら、横浜に住んで、横浜の学校に転校しなさい」
「戻りたくない以上、華蓮が身の危険を感じるようなら、戻せない」

華蓮は、ホッとしたのか、顏をおおって泣き出した。
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