第37話  ザイードと山田保の逮捕、森本華蓮の捕獲

文字数 1,026文字

翌日、暗殺者ザイードは上野で、海外送金を行っている時に、突然警視庁に逮捕された。
刑事は、「元聖トマス学園秘書山岡沙耶の殺害容疑」と言った。

ザイードは、最初は、信じられなかった。
少なくとも、完璧な犯行と自負していたのである。

しかし、取調室で、「犯行時の地下鉄車内の様子」「駅でザイードが山岡沙耶の死を撮影している様子」「元聖トマス学園副学園長山田保の部屋での謀議」「山田保から、ザイードの口座への入金」等の証拠を突き付けられては、反論のしようがなかった。

同日、山田保も「殺人指示」の容疑で逮捕された。
山田保も、当初は、反抗への関与を否定した。
しかし、「元聖トマス学園副学園長山田保の部屋での謀議」「山田保から、ザイードの口座への入金」「暗殺者ザイード自身の証言」等の証拠を突き付けられては、反論のしようがなかった。

二人の逮捕を受けて、山田剛士は、警視庁上層部に裏金を渡し、マスコミ各社には広告料名目で高額資金を支払い、検察への送致と世間への発表を阻止した。
(警察から、山田屋敷に戻し、屋敷内の地下牢に監禁してしまった)


さて、老執事大塚は、二人の逮捕を受け、子飼いの極道に、「森本華蓮」の捕縛を指示した。
「今日中に、周囲に不審を抱かせない手段で、山田屋敷に連れて来い」
「連れて来たら、そのまま、由紀子様の部屋にお連れしろ」
「その際に香苗様も、高校の校門前にうろついているはず」
「香苗様も、同じように捕縛、由紀子様の部屋にお連れしろ」

老執事大塚から指示を出された極道は、聖トマス学園職員の制服に着替え、横浜のK大学付属高校に向かった。
そして、午後3時に、老執事大塚の言葉の通り、校門前にいた杉本香苗を発見し、声をかけた。
「お父様からの伝言です」
「もうすぐ華蓮君が出て来るので、一緒に山田屋敷に戻って欲しいとのことです」
「華蓮君には、連絡済みです」

香苗は、安堵の表情を見せた。
「ありがとう、どうしても、私も華蓮を連れ戻したくてね」
「つい、ここまで来ちゃったけど、時間がずれてつかまえられなかった」
「いきなり高校の中にも入れなくて、困っていたの」

午後3時半になった。
華蓮が、校門に歩いて来た。
聖トマス学園の職員に扮した極道が声をかけた。
「山田剛士学園長の依頼で、お迎えにあがりました」
「いや、再転学の意図は、ありません」
「亡きお母様の遺品を、どうしても学園長自ら、お渡ししたいとのこと」

華蓮は、「そういうことであるならば」と、素直に頷き、お迎えの車に乗り込んだ。
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