第31話 副学園長山田保のスキャンダル発覚

文字数 1,216文字

いわゆる上流階級の子息が通う、超名門聖トマス学園に、大きな衝撃が走った
副学園長にして次期学園長になる予定の山田保の「不倫疑惑」が、マスコミ各紙に一斉に報道されたのである。

「今回の相手は秘書課のY嬢」
「写真付き、音声付きで、Y嬢が涙で暴露」
「無理やりホテルに誘われた」
「山田保の妻は、離婚を示唆、実家に帰った」
「理事会も動揺、山田保副学園長の解任決議準備に走る」

また、山田保にとって「都合が悪かったのは」、父山田剛士が脳梗塞のリハビリを終え、学園長理事として、理事会に復帰していたことである。
山田剛士は、臨時理事会で、早速山田保の副学園長及び理事解任、学園からの追放を決めた。(山田保は、完全に憔悴、そのまま山田屋敷からも、姿を消した)
山田保の後任には、(予定通り)滝口春雄が就任した。

臨時理事会終了後、学園長山田剛士は、副学園長となった滝口春雄を学園長室に呼んだ。
※滝口春雄は、学園長山田剛士の甥(剛士の姉の子)である。
また、滝口春香の父である。
「何とかして、森本華蓮を連れ戻して欲しい」

滝口春雄(事情は、娘春香からも聞き、K社の田中美咲、山岡美紀から聞いている)
「横浜の森本家にいるようです」
「何度か接触しましたが、音楽も、山田屋敷への復帰も、拒んでいます」

山田剛士の顏が苦渋にゆがんだ。
「何故だ!」
「意味が分からん!」
「理由を聴け!」
「華蓮が音楽を拒む?ありえんだろう!」

滝口春雄は、慎重な物言い。
「知り合いの講師に聞いたのですが」
「転校先の高校の部活でも音楽を選ばない」
「秋の文化祭で、華蓮君のクラスが音楽系の出し物をしても、ピアノに触ろうともしない」
「その他大勢のコーラスの一員だったようです」

学園長山田剛士の目に涙が浮かんだ。
「いったい・・・何があった?」
「音楽を捨てたくなるようなことが?」
「華蓮の演奏を期待する人も多いのに」

滝口春雄は、首を横に振った。
「今は、そっとしておいたほうが」
「とにかく、山田屋敷で何かがあった」
「それで、彼の繊細な心に、深く傷がついた」
「その傷を癒す時期も必要かと思うのですが」
「大丈夫です、森本家も立派な家です、少し間を置きましょう」

学園長山田剛士は、苦し気に頷いた。
「そうだな、無理やりは可哀想だ」
「あの子の感性は、鋭い」
「少し待つか、まだ15歳、時間には余裕がある」
「俺も、少し時間をおいて、会いに行くよ」

滝口春雄は、話題を切り替えた。
「山田家の由紀子お嬢様、香苗様」
「それから、私の娘も、華蓮君の転校以降、相当落ち込んでいます」
「春香は、華蓮君の通う横浜の高校への転校を言い出す始末」
「前専務の保さんの事件で、学園内の雰囲気も暗い」
「入学希望者の減少も懸念されます」

山田剛士は頷いた。
「そうだな、それは感じていた」
「不肖の息子で・・・何もできないくせに、プライドだけは高い」
「できるのは、悪だくみと、弱い者苛めだけだ」

学園長室での相談は、打開策が見い出せぬまま、長く続くことになった。
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